リクエスト・企画小説
12月15日
昨夜の記憶があんまりにも鮮明で。




味噌汁を啜ったら思わぬ熱さで「うわっち!」と叫び茶碗をひっくり返し、親父に笑われた。
汁が一面に広がってしまったちゃぶ台を布巾で拭えば、今度は醤油のビンを倒してしまい、白かった布巾は最初からこの色だったのではないかというくらい、濃い茶色に染まる。
ヒリヒリする舌でご飯を掻き込み、「行ってきます」「行ってらっしゃい」のやりとりの後ドアを閉めれば、何とも珍しいことに指先を挟んで飛び上がった・・・右手じゃなくて良かったけど。
そんでもって、商店街を抜けるところで今日提出期限のプリントを忘れたのに気付いて、猛スピードで家に取りに戻ったっていうのに、なんてことだ鞄の底の方にノートに挟まって入っていた。


学校でツナと獄寺に会って双子座流星群のことを訊かれた俺は、逃げるようにしてトイレに駆け込んだら、何故か落ちていた塗れ雑巾で足を滑らせ転びはしなかったものの、先に中に居た奴に衝突。思い切りそいつの額に鼻をぶつけてしまった。


ああ何やってるんだろう、こんなの俺らしくない、ていうかディーノさんより酷いドジっぷりを披露してないか?


手を洗うのと一緒に顔もバシャバシャ洗った。
寝惚けているみたいな頭をスッキリさせたかった。
なのに、ちっともスッキリなんて。
それどころか鏡を見ていたら、昨夜の出来事が思い出されて・・・。


「わー!わー!わー!わーーーーーっ!!!」


突然叫んだ俺に、トイレの便器に向き合っていた奴が驚き目を剥いた。
悪い悪い!でも勘弁してくれこういうの俺は初めてなんだ!!


名前どころか、せいぜい顔しか知らないような女の子に、好きですって告白されたことなら何回かある。
でも俺は、今のところは野球が第一だから。
それに、何となく気になる人がいたから。
ごめんな、ありがとうでいつも終わっていたのに。





熱いうどんを食べて、布団にくるまりながら夜空を眺めていた雲雀と俺。
星が流れ始める時間には普段なら眠っている俺は、どうにも目蓋が落ちてきてたまらず、ついうとうと・・・。


あ、れ?


なんか、唇に・・・


ふわりと香ったのは、いつも雲雀と擦れ違う時に残るミントみたいなそれ。
目を開けたらドアップで雲雀の顔がありそうで、俺はドキドキどころかばっくばく言ってる心臓の音が聞こえやしないか、そればかり気になって動けない。
唇に、少し冷たくて、けど柔らかい感触が残っている。起きて、その行為の意味を問いただすべきなのか、それとも。
だけど出来なかった。
ただのイタズラだよ。
なんて言われるのが怖くて。
もう起きることが出来なくなって、どうしよう、何だったんだろう、考えているうちに寝てしまった俺の隣からは、当然雲雀の姿は消えていて、昨夜のは都合の良い夢だったのかと思えたけれど、小さな座卓に置かれたどんぶり二つが、現実であることを生々しく告げていた。




いつまでもトイレでうろうろしていても仕方ない。もう大丈夫だろうと思い教室に戻ったら、ツナと獄寺が変な顔で見ている。
「あれ?山本顔赤いよ?ね、獄寺くん」
「そう・・すね。おい野球バカ、お前トイレじゃなくて、校内走り回って来たのかよ」
「・・・・・へ」
げ〜、まだ俺元通りになってないのかな、そう思っていたら、ツナが手を額にペタリ。
「うわっ?!ちょっと獄寺くん触ってみてよ!山本のオデコ超熱いんだけど!!」
「――げっ!マジで熱いッス!ていうか野球バカ風邪引いてんなら学校来んなよ!」
「・・・ええ〜」




保健室に行ったら、38℃を越える熱ですぐに家に帰された。


小さい時からの掛かり付けの医者は笑って行った。
「知恵熱だね〜」


マジすか・・・。

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