リクエスト・企画小説
12月13日
部活が終わって帰ると、はっきり言って究極に腹減ってるし疲れてるし汗早く流したいしで、まず何を優先させるか迷う。
でも親父が夕食当番の日は、自分が作らなくて良いぶん時間に余裕があるから、最初に風呂入るんだ。
けどそうすると、何故か途端に眠気に襲われるんだよな。
上がってからが地獄というか天国というか、ご飯を茶碗によそうのも億劫になっちまったり、味噌汁を器に入れようとして手にかけてしまったり・・・食べながら眠っていたこともあったっけ。
で、そんな風にまともに食べたか食べていないのか記憶が曖昧な日は、夜中に(つっても10時半とか11時くらいだけど)お腹が空くときがある。
そしてそんな俺を見計らったかのように訪れる珍客がいるんだ。


その珍客と、自分のお腹の虫の為に、今俺は台所に立ってアメリカンドックもどきを作っている。
ホットケーキミックスを固めに捏ねて、一口サイズの団子状にした中に、一種類はウインナー、もう一種類はチーズを入れて。
普通はくしに刺してアメリカンドックにするんだけど、くし使うの勿体ないし、正直めんどい。
それを油であげたら、ウインナードックとチーズドックの出来上がりだ。


ふわんと優しい匂いが立ち込めて、こんもり山になったドックたちを一つ、また一つと口に入れて行く俺達の手元には、ホットミルクとコーンポタージュ。
悪いけど、コーンポタージュはインスタントだから。空腹はそりゃ耐えられないけど、眠気にも襲われてるのよ俺。だる〜いの。
「・・おいし」
「ん〜・・・ひばりって、こういうの好きだよな〜」
眠たいポヤポヤの頭に何となく浮かんだ言葉で返事をする。
「何が言いたいの」
「ハンバーグとかさ、ホットケーキとかさ・・・なんか子供みたい?」
「余計なお世話だよ。だいたい中学生なんてまだ子供じゃないか」
「まあな・・・」


もそもそ もそもそ。


まったり喋りながら、でも決して口にドックを運ぶ手は止めない俺達。
食べてる時って気持ちが無防備になると思う。だって雲雀がすげー嬉しそうな顔してるし。
一緒に食べてる相手が嬉しそうだと、作った方も嬉しくなるよな。
「・・はは、そんなにうまい?」
「美味しいってさっき言ったよ」
「どんくらい?」
「・・・・きみが女の子だったら奥さんにしたいくらい?」
「おお、すげえ誉められてる?俺」
「誉めてる誉めてる。だから今度またあの塩バターラーメン作ってね」
「あ〜・・・あれ、な」
最後の一個を頬張った雲雀が作ってと言ったのは、実は亡くなった母が唯一得意だった料理、塩バターラーメン。
たまたま袋もののインスタントラーメンが残っていたから作っていた時に丁度来たものだから、仕方なく半分あげたら気に入ったみたい。
だけど実はあれ、あんまり作らないんだ。何となく母さんのこと思い出して、しんみりしちまうから・・・。
「はいはい・・いつかな〜・・覚えていたらな〜・・」
食べ終えた食器を洗って水切りに伏せると、本格的に睡魔が俺を征服にかかってきた。
軽やかな足取りで二階へ上がって行く雲雀の白い靴下しか、今の俺の目には映っていない。
「・・窓、ちゃんと・・」
布団に入ったらもうダメだ。
無用心・・ていうか無防備?なんて声が聞こえた気がしたけど、その窓が無用心なおかげで夜食にありつけるんだぞ?
額に柔らかくて温かい何かの感触。
幼い頃母がしてくれた悪い夢を見ないおまじないみたいで、嬉しくなって笑ったけど、はてこれ現実?


今夜の出来事のどこまでがホントで、どこからが夢なのか、明日起きてからの俺には判らないんだろうな。
雲雀に聞いてみようかな。





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