リクエスト・企画小説
12月11日
昨夜は何年かに一度っていう皆既月食だった。
前日に9日と10日を勘違いして一生懸命月を見ていて親父に笑われた俺は、今日こそは見てやる!と意気込んでいた。
商店街の真裏にある風呂場の窓から、真ん丸の月が、たまに雲に隠れながら、さえざえとした光を放っていた。これはよく見えるに違いない。
風呂に入って温まり、窓際に寄せた布団の上で肩からすっぽり毛布と掛け布団を被ってセットアップ!あと数分で始まる!
明日野球部の奴等と今夜の月を話題にしようか・・・なんて思っていたのに。


俺は、見逃してしまった。


そう、あれは風呂上がりの夕飯後で、布団に包まれ温かいし、腹はいっぱいだしでそれはそれは気持ち良くて。父に『たーけしー!電話だぞ〜』と階下から呼ばれて、慌てて空を見上げたら


太陽がせせら笑うように輝いていた。


『あ、山本?皆既月食見た?すごかったね!』
ツナ・・・どうせなら月蝕が始まる時に電話くれたら良かったのに・・・いや、でもツナが電話くれなかったら、寝坊してたかもしれねえしな―――いや確実にしてたな。目覚ましかけるのも忘れて寝てたしな。
「サンキューなツナ」
『へ?何が?皆既月食が?』
「いや、電話くれてさ」
『え〜だってさ、凄かったから!不気味だったけど、結構感動したもん俺。実は寝不足だから、またこれから寝る予定なんだけどさ』
「・・・そっか、その感動わけてくれよ」
『・・・・は?』


珍しく朝寝坊してしまった俺は、部活の始まりに間に合うように、既に炊かれていたご飯に味噌汁をぶっかけて腹に流し込んだ(親父ゴメン)。
数年後の皆既月食は、ツナが受けた感動を是非とも味わいたいな。


あははは



がっくり・・・。



皆さんは見られましたか?

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あきゅろす。
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