リクエスト・企画小説
帰還(山本&スクアーロ+ディーノ)
何がどうしてそうなったか知らないが、山本の脚が治っていた。
単純に嬉しかったさ。
どんな人間をも安心させてしまうアイツの笑顔を、失うようなことだけはあっちゃならねえって、俺達は思っていたんだ。


剣の筋は悪くない。むしろ潔く思い切りの良い太刀筋に、自分たちと同じ匂いを嗅ぎつけ、いつしか魅了されていた。
だが、人柄も、人懐こさも、まるでマフィアになんかそぐわない。球遊びが好きで、マフィアの世界を目の当たりにしても「ごっこ遊び」と笑っていたアイツ。


そんな山本が、未来ではマフィアの世界に身を置いていた。
普通の生活を、生温い幸せを、奴は捨てたのだ。
アイツのことだ、よくよく悩んで、決めた後はすっぱり割り切ったんだろう。


突如飛び込んで来た未来の記憶は、俺を、跳ね馬を喜ばせ、そして少しだけ感傷的にさせた。
俺が“甘過ぎる”と、跳ね馬が“底抜けに明るい”と評したアイツの笑顔に、何か違うものが含まれるようになってしまったことが、少しだけ哀しく残念だったからだ。
それでも、また共に同じ道を歩んでいることを思えば、心はいくらか軽くなった。
遠く離れてしまったならいざ知らず、同じ道を行くなら、例えばそれがどのような笑顔であっても、俺達は側にいたら良いのだから。
奴の成長を、前で、後ろで、その場所で直に見て喜び、そして哀しんだら良いのだから。


だから、医師の「もう二度と歩けない」との診断、そして宣告は、俺たち二人を突然足下にぽっかり空いた黒い穴に突き落とした。


俺達がお前を置いて行く?


もう二度とお前は、俺達を追い掛けて来ない?


どころか




俺達はお前の笑顔を、それを見ていられる場所すら、永遠に失ってしまったのか?




ディーノと共有したあの瞬間の虚しさは、こうしてお前が俺達の前で何でも無かったみたいに笑っていたって、一生消えはしないだろう。
「ネックレス首に巻いたかぁ!?」
「ほら、そんな格好じゃ風邪引いちまうから、これ着ろこれ!」
「う゛ぉぉい!VGのやり方、おさらいしとかなくて大丈夫なのかあ!?行く前にもう一回確認しとけぇ小僧ぉ!」
「俺達送って行かなくて平気か?体フラフラしねえか?」


「だあいじょうぶだって!ありがとなディーノさん、スクアーロ!」


これから敵地へ乗り込むってのに、お前は清々しいまでに心配無用の頼もしさで笑ってみせる。
ガキのくせに、なあどうしてお前の笑顔は、いくつもの死線を踏み越えて来たマフィアの俺達まで安心させちまうんだろうな。
ふと見れば、ディーノも同じことを感じていたらしく、目が合って苦笑する。


「行って来るぜ!」


肩に時雨金時を携えた山本の背中を俺達は親愛を込めて叩いた。


「ああ、行って来い!!」
「ぜってー負けんじゃねえぞぉ!!」





そうして勝って、またその笑顔を俺たちに見せてくれ。






おわり
何だかんだ言って世話焼きなお兄ちゃんずが大好きです。
二人とも一目で幻覚山本を見破るくらい山本が可愛くて仕方ないですからね、体のこと聞いて、絶対愕然としたと思う・・・。
勝負に負けたとかならまた鍛え直すことだって叱咤激励だってできるけど、「二度と歩けない――って、何だ?どうしてだ?どういうことなんだ?何でアイツが!?」って、二人してすっごいショック受けたんじゃないのかしら・・・。
は〜つくづく、山本が還って来てくれて良かった。
誰が遣られるより、皆に与える『ダメージ』が大きいのは山本のような気がします。
スクアーロとディーノさんはこの後やっぱり居てもたってもいられずにヘリで山本を追い駆けたんじゃないかな(笑)

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あきゅろす。
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