リクエスト・企画小説
・・・行かせてください(ザン山)
※リクエストして頂いたベッドの上の山本〜ザンザス編の続きみたいな感じです。









さて、行かなくちゃツナが待ってる。
と、思いながら、隣で眠っている男をちらりと横目で眺める。
素晴らしい奇跡によって動けるようになった体。それを確かめるかのように、昨夜あちこち(人には言いたくないような所にまで)触りまくり大変な目に遭わせてくれた相手は、看護師さんが来た時は居なかったのに、今は何故か同じベッドの中で眠っていた。


俺の手を、その硬い掌でぎっちり握り締めて。


さっさと行ってしまいたい・・・・。
いや、ベッドに寝ていた間、頼まれたとはいえ、本人曰く“暇だったから”とはいえ、動けない自分を世話してくれた礼は、ちゃんと言わなきゃならないだろうけど!でも・・・


でも・・・・・・・はっきり言えば、顔を合わせ辛い。


取り敢えずこの手を外してもらわないことには、何も始まらないな。山本はザンザスの指を一本ずつ外そうと試みる。
が、なんということだろう、食い込むほどにしっかり繋がれた手は、まるっきり動きやしない!
(な、なんつー力!そりゃザンザスは大人だけど、俺だって結構手はでかい方だし、野球やってんのに・・・!)
グググ!と力を込めて漸く人差し指の第一関節が剥がれた!と喜んだのも束の間。
「―――!!」


―――寝転んだ姿勢で見下ろしているザンザス。


ばき。
握り込まれた指が変な音立てた。
「ふぎゃーーーーっ!?ザンザス?!お、起きてたのかよ!?」
「んなに指をぐいぐい引っ張られりゃ、目くらい覚めんだろ」
「あ、あははは、だ、だよな〜って、ああっ!?」
ニヤリ口角を上げたザンザスの手元で、漸く離したはずの人差し指が、また山本の手にしっかり密着していた。でもって今度はご丁寧に恋人繋ぎって形で絡め捕られてしまっていた。
「ザ、ザンザス〜」
「離すかよバカ」
「あううう」
誰も見ちゃいないって判っているけど、やっぱり恥ずかしくて、繋がれていない方の手で白いシャツをぎゅうと掴んだ。そうしたら抱き締めるように首の下から腕が回されて、いよいよ逃げられなくなってしまった。
ザンザスの吐息が髪にかかって、心臓が速まる。ドキドキ鼓動がうるさい。
そんな俺の気持ちとは裏腹に、ザンザスは涼しい顔で枕に頭を預けている。
手を繋いでくれるのはうれしいんだけど、ドキドキする胸と一緒に、焦りも加速していた。
だってツナたちの所へ早く行ってやらなきゃならないのに、事態は一刻を争うっていうのに―――。


「気に入らねえな」


心底気に食わなそうな地を這う声に、山本は顔を上げた。
不機嫌を絵に描いたような歪んだ眉間が飛び込んで来る。


「え?な―――」


何が?と問う隙も与えずに奪われた唇。呆然とする山本が言葉をつむぐ前に、ザンザスが口を開いた。
「気に入らねえに決まってんだろ?俺はこのままお前をイタリアに連れ帰るつもりでいたんだぜ?なのに突然マンガみてえに治りやがって、あの小便小僧の所へ行くだと?寝耳に水だ!鳶に油揚げだっつんだよ!おまけにテメエ、俺に黙って行こうとしてやがったろう?!」
うひゃあ、バレてた――は、声に出さずにいた。
一気に喋って、ギロリと山本を睨むザンザスは、流石リアルマフィア、眼光の鋭さで相手を殺せそうだ。
けれど山本は、違う意味で俯いた。確かに逃げるように出ていこうとした。だけどそれは別にザンザスが嫌とか苦手とか早く離れたかったとかそういうんじゃなくて、むしろ。
「・・・何か言えよ」
ボソリ、ザンザスが山本の耳に息を吹き込むように囁く。すると突然山本が顔を真っ赤にして耳を手で覆い、アルマジロみたいに体を堅くした。
「・・ひゃ・・!だめ!!・・あ!」
「―――あ?」


「「・・・・・」」


シーツの上で背を丸めた山本が、そろり・・・と顔を上げた。
「おま・・」
顔から耳から首筋から、全て真っ赤に染まった山本は、瞳まで潤ませているものだから、ザンザスだって思わず頬が弛んでしまうというもので。
「ザ・・・ザンザスの声、間近で聞くと、俺、ダメ・・・なのな・・」
ふるふるしている山本に、許して解放してくれるかと思いきや、ザンザスは先程とは一転気を良くして、覆い被さるように山本の体をベッドへ縫い付ける。
「あ、の・・・ザンザス?」
「そうか、俺の声でテメエは腰が砕けるって訳だ。そりゃあ良いこと聞いたな」
「は?」
「・・は、じゃねえだろ?だからさっさと俺から逃れようとしてたってんだろ?」
「う・・・!」
「―――武」
「ふゃ・・・っ――――!!」
熱くねっとりねじ込まれた自分の名前に、腰の辺りがじんと痺れ、山本の瞳が頼りなく揺れた。
暴れたところで体格差は歴然で、いや、暴れようなんて気持ちすら、ザンザスの声に支配され奪われていく。


哀れ山本は、病室の扉の前で待機していたスクアーロとディーノが、決死の覚悟で飛び込みザンザスの頭をフライパンで殴り付けて伸びさせるまで、この拷問に近い重低音ボイス攻めにあったという。




因みに、助けられたときの第一声が「本当に困ってるとき、助けてくれるのが友達だ・・・」だったかどうかは、定かではないし、目覚めたザンザスに、スクアーロとディーノがどのような目に遭わされたのかは、口に出すのも恐ろしいので聞かない方が良いと思われる。






終わり

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