リクエスト・企画小説
ユニ&アリア
ちくちく ちくちく 刺さる視線。なんだって俺がこんな思いをしなければならないのか。それというのもあのよく解らんことばかり思いつく男のせいだ。
「ん〜、ホントに見事な仏頂面ねえ」
「おじさんは貴方のどこがそんなに気に入ったのでしょうか」
ザンザス腰掛けるソファの右と左に陣取って、頬に同じ跡を付けた女性と子供。
(人の横顔をジロジロ眺めやがって・・・・)
しかし親子揃ってずけずけ物を言うところは、さすがアイツの血縁者らしいと頷けるが。
「やっぱり顔かしら」
「おじさん、面食いそうですものね」
「それとも自分より背が高かったから?」
「ああ、逞しくて身を挺して守って下さいそうですね」
「確か記憶力は良いのよね?」
「執念深いの間違いではありませんか?」
決して性格の一つたりとも褒め上げたりしないところに引っ掛かりを感じないでもない。いつもなら怒声を張り上げ追い出してやるところなのだが、どうにも気がそがれてしまうのは、やはり二人の中に山本の面影を感じてしまうからなのだろうか。
仏頂面、と評された顔を解すつもりもないが、けれどそれ以上には歪めもせず、ザンザスは成すがままに沈黙を通した。
「・・・・それでも、あの子が選んだ人なんだから、私たちは信じているの」


山本と同じ瞳が静かに微笑み、ザンザスを覗き込む。穏やかな笑顔は、寂しさを隠し持ったあの男と全く同質のもの。
先を見通せる力が、この親子には備わっているのだという。だとしたら、自分たち二人の未来にある何かも、彼女たちは感じ取っているのだろうか。
「あなたは、あの子を泣かせたりはしない人ね?とても優しい子だから、絶対涙なんて見せないでしょうけれど・・・貴方は解ってあげてくれるって、信じるわ」
そう、ジッリョネロの女傑が言えば
「お誕生日おめでとうございます。私たちからのプレゼント・・・大切にして下さいね?」
最強アルコバレーノを束ねる次期トップだという少女が、かげりの無い笑顔を見せた。
ザンザスの両手にふわりと重ねられた柔らかな掌。その指先には、あの男と同じ形の爪。
長くて、少し先端の丸い、白い半月模様がハッキリと見える―――。
「心配しなくても、俺はアイツを泣かせやしねえよ」


俺の顔を見上げ、確かめ合うように頷きあって眉根を下げ笑う二人は、コーヒーとミルクをトレイに乗せて入って来た山本と入れ替わるように帰って行った。
残ってしまったコーヒーにミルクを注いでカフェオレにしたそれを飲みながら、何があったのか、どんな話をしたのか、聞きたい顔をしながらも決して聞き出そうとはしない男を抱き寄せ、コーヒー味の唇と舌をやんわりと食む。


大変な約束をしてしまったかもしれない。まあ、覆すつもりも無いけれど。




おわり

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あきゅろす。
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