リクエスト・企画小説
ハル
結局誰が一番になるかをアミダで決めることになって、一番バッターを引いてしまったのはなんと、最後までなんでどうして絶対嫌と首を振っていた三浦ハルだった。


現在山本がザンザスと仕事の無いときだけ二人一緒に生活している家の台所は、甘ったるい匂いであふれている。
「ほんと〜に、こんなものであの人のご機嫌が上を向くんでしょうか〜?」
焼き上がった薄黄色のスポンジを真ん中から半分にして、ハルは生クリームを塗った上に生のフルーツを刻んでいくつも乗せていた。
「大丈夫大丈夫!ハルのケーキは美味いし、アイツ美味いもん大好きだから!」
フルーツを間に挟むようにしてもう半分のスポンジを乗せ、生クリームをこれでもかと塗りたくって。今度は綺麗に飾りつけるように、彩を見ながら鮮やかな果実たちを乗せ、チョコレートで出来たプレートを乗せれば完成。
「よっし、じゃ行こうぜ」
「・・・はい〜・・・・・・」
イマイチ、どころかイマニ、イマサンも気乗りのしないハルを車の助手席に乗せ、目指すは泣く子も黙る暗殺団の根城通称ヴァリアー城。
ところが、ではいざ行かん!とキーを差し込んだところで、ハルが突然素っ頓狂な声を張り上げた。
「あーーーーーーーっっっ!!!!」
「な、な、なんだぁ?!」
驚く山本を他所に、シートベルトを外して家の中に入ろうとする。
「どうしたんだよハル!?」
「プレートに字を書くの忘れてましたっ!!ペンシルチョコ取って来ます!」
「ああ」
そんなこんなのやり取りが約3〜5分。そうしてペンシルチョコを手にしたハルを伴って、山本は漸くザンザスの元へと車を走らせた。


 執務室のドアをノックする―――が、返事が無いのはいつものこと。普段であれば山本の気配を感じてドアノブに触れるドアが開いたり、なんて事もあるのだが、今日はとてもそんな気分ではないらしい。それとも、横に山本以外の誰かの存在があるから、遠慮しているのだろうか。・・・ザンザスに至っては、その様な事はまずないだろうけれど。
「ザーンーザースー?」
扉を開ければ、いつもの場所で長々寝そべっているのは、見慣れた長い脚、特徴のあるきつい眉。
目を瞑って眠っているかと思えば、その眉間には定規を当ててやりたくなるほど深い皺が刻まれている。
「あーほら、せっかく女の子が美味しいケーキ作って来てくれてんだから、そんな顔しない!」
「・・・・頼んじゃいねえ」
「その減らず口に時雨金時突っ込まれないうちに起きてなー?」
にこやかかつ恐ろしい一言でザンザスは漸く重い腰をソファから持ち上げた(とはいっても、普通に座っただけなのだが)。
そんな山本の背後でハルは、先ほど取ってきたチョコペンシルでせっせせっせとプレートに誕生日おめでとうとイタリア語で書き上げて。
「Buon Compleannoでーーすっ!!!ザンザスさん、はいっ!」
そうして差し出されたデコレーションケーキを見て、ザンザスの眉間の皺が先程より確かに2本は確実に増えた。
「・・・・・おい、ハヒ女」
「ハヒ女じゃありませんっ!!ハルです、三浦ハル!!」
「るせえ!!てめえなんざハヒ女で充分だ!!何だこりゃあ!?」
怒髪天を突かんばかりにいきなりハルに怒鳴り始めたザンザスに、山本も慌てる。
「ど、どうしたんだよザンザス!?」
「俺がそんなジジイに見えるってのかこのクソカス女!!!」
「ええ!?あ、・・・・あーーーーーーーーーっ!?」
叫び青くなるハルからザンザスを引き離し、どうどう!!と宥めながら、デコレーションの上のプレートを見れば。
『Buon Compleanno 84』
なんと3と描いたはずのチョコが丁度真ん中で繋がってしまったらしく、8になってしまっている・・・・。
「ちょっとしたミスじゃないですかーーーっっ!!心が狭すぎますっ!!だからツナさんに力でも人格的にも勝てないんですよっっ!!!!!」
「ンだとこのクソアマっ!!!消し炭にされてえのかーーー!!!!」
「やーめーろーーーーーーっ!!!!」


 山本の叫びむなしく、怒りまくったザンザスによって部屋の中は焼け焦げがいくつもでき、ルッスーリアがまた修理費がかさむと嘆くはめに。
それでも何故かケーキだけは無事テーブルに残されており、ザンザスの自室のベッドの上で山本がフォークに突き刺して『はい、あ〜ん』とやったかどうかは定かではないが、二人仲良くおなかに納めたらしく、翌日ハルの元へヴァリアーから粗品が送られてきたとか。





一日目は騒いで終わり・・・。

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あきゅろす。
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