リクエスト・企画小説

誕生日を祝ってもらっていたのは、いつまでだっただろう。
綺麗なドレス、テーブルを飾るとりどりの花束、階段のように積まれたプレゼント。
嬉しかった。
だけど、本当に欲しいものはそこには無かった。
『お嬢さま、こちらがお母様から、こちらがお父様からです』
プレゼントの山は二つに分けられ、それが両親からの愛情だと見せつけんばかり。
欲しいのは、プレゼントなんかじゃないのに。
欲しいのは、


本当に欲しいのは・・・・・。


「おい」
薄暗い部屋のソファに横柄な座りかたで腰掛け、その男は特異な赤い瞳だけをギラギラ光らせてこちらを見ていた。
どうして自分はこんな所にいるのだろう。別に、この男とは同じボンゴレというファミリーに属しているという他に、何の接点も無いというのに。
「辛気臭え顔してんな」
もとからこのような喋り方しか出来ない男とは知っているけれど、普通は年を重ねると共に他人への接し方を学んで行く筈なのだが。
「・・・こういう顔なの。嫌なら見ないで」
そういう自分も、あまり大差ないなと思いながら溜め息が零れた。


・・・こんな風にしか言えないから、父や母は自分を見限ってしまったのだろうか。


(骸様・・・)
あの人が居なければ、世界は闇に包まれ絶望のまま、閉じられていた。
あの人と、犬と千種が居なければ、自分など何の価値も無い。骸様と犬と千種。彼らが自分の全て。彼らさえいれば、世界は輝いている。
それでは何故この男はここにこうしているのだろう。世界を呪うような目をしていたこの男が、嫌だ嫌だと言いながらそれでもここに留まっている理由は一体―――?


「なんだ?あ〜また、二人してカーテンも開けないで」
ノックがあったかどうかも判らないくらいすぐにドアが開いたかと思うと、長身が足早に窓を覆う厚地のカーテンを勢い良く開けた。
昼間だとは思えなかったくらい暗かった部屋に、一気に光のシャワーが注がれる。
「・・てめ!眩しいっつってんだろうが!」
ソファに転がる際には枕にしているらしいクッションを投げつけるも、難なくキャッチした男は楽しげに肩を揺らして。
「明るくないからわかんねえんだよ。ほらザンザス見てみろよ。凪、綺麗だろ?」
手元も見ずにカーテンを纏めながら促す男の言葉のままに、ボス、と親愛を込めて呼ばれている顔に大きな傷持つ男は、凪のヒールの足先からオーガンジーのあしらわれたドレスを辿り深紅の唇を眺めて、『悪くはねえ』と、初めて笑顔のようなものを寄越した。
締め切られ、鬱々した気を追い出すように窓を開け放ったのは、最初に答えたとおり“嫌だ”と首を振った自分を飾り付け、この部屋に送り込んだ張本人。
目許に掛かる前髪を緩やかに風に揺らしながら、怠惰な瞳を向けている男のその背後、穏やかに佇む。


ああそうか。深淵に佇み、復讐の炎にばかり囚われていたこの男もまた、たった一つの光に導かれ己の生きるべき世界を見出したのだ。



おわり

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