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並盛高校編
(うわ、デジャビュ?)
朝のいつもの登校風景、並盛高校生たちが群れなす生徒玄関前、リーゼントに長ラン姿のいかつい大男が立ち並び、その中心には涼しげな切れ長の目許でどんなささいな乱れも見落としなど許さないと生徒たちを見渡す、今年度風紀委員長に就任したばかりの雲雀恭弥、そしてその前には・・・。
(や、山本ー!?)
「あ、おーすツナ!」
(気付かなくていいってばーー!)
最強委員長の前、自分に向かって嬉しそうにブンブン手を振る山本の後ろでは、その彼氏が静かに笑いながらこちらを見ている。
(ひ、雲雀さん目が笑ってませんー!)
けれど二人に見つかってしまった以上、逃げも隠れもできなくなった綱吉は、重い足を引き摺りながら側を歩く生徒たちと同じように風紀委員が立ち並ぶ玄関へと歩みを進めた。
「おはようございます雲雀さん、あの、今日は一体・・?」
「持ち物検査だよ」
(やっぱりー!)
ガーンと真っ白になった綱吉の背中を山本がバンバン叩く。
「なー、何か中学の時みてえで懐かしいよな」
朗らかに笑う山本。でもそれが楽しいのは山本と雲雀さんだけだから!
「さ、鞄開いて見せて」
雲雀から声をかけられ仕方なく中を見せた綱吉は、そういえば何で山本はずっとここに居座っているのだろうと思い、背の高い彼を見上げた。
「ああ彼はいいんだよ」
まだ何も言っていないのに、それも雲雀から返事が返ってきて綱吉は二人を見比べた。
「持ち物検査はパスしたんだぜ」
自分より20センチ近く小さい彼に身を屈めるようにして、山本が少し誇らしげに笑う。
「だけど服装でひっかかったんだよ」
そんな山本の襟首を掴んで立たせた怖い風紀委員長は、手にしっかりと山本の名前入りのネクタイを持っていて。
「全く、鞄に入れて置くならちゃんとつけてくればいいのに」
「だって自分でやろうとすると曲がったりすんのなー」
「普通逆だと思うんだけどね」
滑らかに口を動かしながら、素早い動作で山本の首にきっちりとそれは結ばれた。
「ははっやっぱり雲雀にしてもらった方が綺麗なのな」
「褒めたって何も出ないよ」
・・・あのー、まんざらでも無さそうだというのはとりあえず置いておいて。男子高校生二人が生徒玄関前でネクタイを結ぶ図というのは、いかがなモンなんでしょう。
(雲雀さんとしては、一応周りに牽制してるのかもしれないけど・・・)
ほら皆怖がって見てる。だってこの風紀委員長だもの。どう見たってネクタイをつけているというよりはネクタイで首を絞めているように見えているのではなかろうか。
「じゃ、またなー」
そうこうしているうちに山本は一人さっさと校舎に入ろうとしていて、雲雀さんも校門に向き直っている。二人とも引っ付いてるかと思うとあっさりしてて、ここら辺がやっぱり男同士なんだなーと思う。
ぺたぺた学校指定の内履きを突っ掛けて歩く山本の背を追いかけていけば、何となく聞こえてくる鼻歌。
(・・・嬉しそうだな)
たった一年間だけど、高校と中学で離れ離れだった彼ら。毎日会えるって事が楽しくって仕方ないっていう山本の顔―――。
(ま、良かったよね)
まだ告白もしていないけれど、別の高校へと進んでしまったマイマドンナの顔を思い浮かべて、何となく羨ましくなってしまううららかな春の並盛高校で、綱吉は背の高い彼の後ろ頭に微笑んだ。



 本編でのサイドストーリーということで。ツナは二人の同居をまだ知らなかったりします。山本は内緒にしてるわけじゃなくて、ただ言い忘れているだけだと思います(笑)


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あきゅろす。
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