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父ちゃん あのね
今年もまた、桜の季節がやってきた。商店街を一歩出れば、暖かな春の陽気に、タンポポみたいな黄色い帽子があちらこちらに目に止まる。
(おーおー、ちっせえなあ。転ぶなよお)
配達用の寿司桶を抱え、片手でバイクのハンドルを握って、横断歩道を通りすぎる小さな子供たちをしばし観察。
(そういやあ、武もほんの2週間前までは、あの帽子を被って学校へ通っていたんだったなあ)



楽しそうにランドセルに教科書を詰めて行く日もあれば、帰って来るなり割烹着にしがみついたりする日もあった。
そのたび、『父ちゃん、あのね』と、言い淀みながら、たどたどしくも一生懸命俺に話してくれたよなあ。
『今日ね、友達とね』
『俺、やなのな』
『つくし生えてた!』
色んな話を聞かせてくれて。
なあ武、俺がそのたびに、どんだけ嬉しいかお前には分からねえだろう。
忙しくて構ってやれない俺に、楽しくてちょっといやなこともある、そんなお前の1日を知ることができて、なあそれをお前の口から伝えて貰えて、俺がどんなに嬉しいか。
もう少し大きくなれば、こんな風に聞かせるのが恥ずかしく感じて来るようになるだろう。俺がそうだったように。
だけど、まだ今は、俺の割烹着の袖にぶら下がるみたいにして聞かせてくれよ武。



『父ちゃん あのね』




てさ。







おわり
始業式なので。去年は入学式編でしたので、今年はこんな感じ。
父ちゃんも息子もお互いが大好きなんだよね山本家は!!!

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