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これは愛だよ?
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 「あっ...や、激し...っ、く、久礼く、ん...あぁっ、は、」

 久礼の家、部屋の前。俺は目の前の扉を開けることなくその場に立ち尽くしていた。

 部屋の中から聞こえるのは女の高い喘ぎ声。
今、久礼が部屋で何をしているかは明らかだった。

 なんでだろうか。なんで久礼はこんなにもあっさりと俺のことを裏切るのだろうか。
俺は久礼がいればいいって言っているのに。

 今日は休日。暇だった俺はとくに久礼にメールで連絡をすることもなく、当たり前のように久礼の家に遊びに来た。

 チャイムは鳴らしたが出てこなかった。しかし玄関のドアは開いていたので勝手ながらそのまま俺は家の中へと入った。


 久礼の両親はどこかに出掛けているのかいない様子で、しょうがなく部屋にいるであろう久礼を呼ぼうとした瞬間。

 「...声」

 どこからか女の喘ぎ声が聞こえてきた。

 そこで、今まで意識してなくて気付かなかったが、玄関にピンクの可愛らしいパンプスが一足あるのが目に入った。

 それは若い女が履くようなデザインで久礼の母親のものではないことはすぐに分かった。

 「またなのか...」

 一瞬にして俺の顔から表情が消えた。

 俺はその声を辿るようにして階段を上った。
そして久礼の部屋の前に着き、今に至る。


 静かに扉を開け、隙間からなかを覗く。


 ―あぁ、同じだ、同じ。相手が男から女に変わっただけ―


 また目の前が真っ暗になり、扉も締めず俺はフラフラと階段を下りていく。

 久礼は俺のモノなのに。俺だけ、のモノなのに...久礼に触れていいのは俺だけなのに。

 それなのに、なぜだろうか最近の久礼は俺以外の人間と触れ合う。俺とはしないことも平然としている。

 付き合っているのは俺なのに、他人の...どうでもいい奴は俺の知らない、久礼の顔を知っている。

 人間の本能、欲求――性に貪欲な恍惚とした久礼の顔。
俺はそんな顔を向けられたことがない。

 知ってる。これはただの嫉妬。醜い嫉妬。
俺だって人間だ、欲求だってある。

 それなら今、そこでカスの女とヤッてる久礼の前に行って言葉を、気持を、吐き捨てればいい。

 お前は俺のモノだ。だから俺以外の奴に触るな。俺だけを見ていろ。


 そう言ってやればいい。そう言って久礼に俺の気持ちを分からせてやればいい。

 「...はは、無理...だな」

 そんなことが出来ていれば、こんなに悩んでいない。

 久礼が好きだ。狂ってしまうほどに好きだ。
久礼の視界に俺以外の人間が入るのに嫉妬を感じるほどに、久礼のことが好きなんだ。

 頭にあるのは、久礼のことばかり。苦しい、苦しい、あぁどうしようか。

 久礼が愛しい。だけど好きになればなるほど、俺の中に生まれるのは苦しみばかり。

 ―すでに俺は久礼に狂ってしまっているんだ―

 だから...邪魔な奴は消してしまおうか――?


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