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これは愛だよ?



 「嘉一(カイチ)、今日一緒に帰れないんだ。ごめんね」


 帰りのHRが終わり、帰る準備をしていると俺の恋人である久礼(クレイ)が、申し訳なさ気にそう言ってきた。

 そしてその言葉を聞いて俺はため息をする。

 「なんで」

 「あー...部活の先輩とカラオケに行くんだ」

 目を俺に合わせず、頭を軽く掻く久礼を見てすぐに嘘を吐いているのだと分かった。
途端、俺の中で苛立ちが募ってきた。

 「あぁ、そう」

 しかしその嘘を問いつめることはせず、てきとうに返事をすると俺は鞄を肩に掛けすぐにその場を去った。

 もちろん、「明日は帰ろうな」と、後ろでそういう久礼も無視して。


 こんな態度ガキみたいっていうのは自覚済み。

 「図書室にでも行くか」


 今帰ってもバスが混んでるだろうと予想した俺は、次のバスが来るまで図書室にいることにした。
下校する人の波に逆行して図書室まで歩いて行く。

 そこまでの道の途中で何度も肩がぶつかり余計に苛立ちが増した。


 そんな中図書室に着き椅子に腰を下ろした瞬間、タイミング良く携帯のバイブが鳴った。

 そして開けば画面に写し出される苛立ちの原因である男の名前。

 「...もしもし」

 『ぁ、もしもし嘉一!?俺だけどさ、今日の夜俺の家に来ない?』

 不機嫌な俺の声とは違い電話から聞こえる声はとても明るいものだった。


 「は?何、急に。てか先輩とカラオケなら夜は無理じゃないのか、」


 『うん?、あぁ大丈夫大丈夫!嘉一と会うんなら早くに帰ってくるから』


 「...俺のため?」


 『嘉一のため!』

 瞬間、俺の中のイラつきが消えた。
俺はなんて単純なんだと自分を責めるが、それだけ久礼のことが好きなんだ。
 しょうがないだろう、と思考を甘くする。


 「...わかった。行く」


 『やった!じゃあ8時ころ俺の家に来てよ!じゃあまた後でね、』


 「あぁ、」

 赤くなる頬を感じながらも、いつも通りの口調で最後まで話し通した。

 さっきまでの久礼の嘘もどうでもよくなった。

 前から自分は恋愛には淡白な方だったが久礼に告白され、付き合うようになってからは
表には出さないが内心ドキドキしっぱなしだった。

 最初は冗談半分で付き合い始めることにしたが、今では久礼が中心の生活にまでなってしまっている。

 多分、これは初恋なのかもしれない。俺は緩まる頬をどうにもすることができなかった。


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あきゅろす。
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