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これは愛だよ?
15


 本能でこいつから離れなければ、と思いまだ幾分か自由のきく足で久礼を蹴りあげようとするが、あっさりと掴まれそれは久礼の肩に掛けられる。


 「うっ...は、苦しっ、」

 そしてそのまま久礼は俺の方に体を近づける。
そのせいで久礼の肩にある足が同時に近づき、体が曲げられる苦しさに俺は小さく呻いた。

 「嘉一、別れるなんて嘘だよね。嫉妬しただけでしょ?...―でも、あれはダメだ。画像見たよ、たくさん写真があったね。嘉一と他人が絡んでる写真」


 「離れろッ、ひっ、ん...」


 「俺には嘉一だけって言ったのに。俺は浮気なんてしてない。すべて嘉一のためだったのに、あいつらさ嘉一に近づこうとしてたんだよ?皆ね。
だから気を逸らすために俺が近づいたんだ。そしたら途端に皆俺に媚て、嘉一をけなし始めたんだ。
...身の程も知らずに。だから――」


 「皆売ってやった」とおかしそうに笑いながら久礼は俺の耳元でそう言った。

 それは今まで聞いたことがないほど冷たく、低い声音だった。

 「...売った...?」


 それこそ意味がわからなかった。売ったって?...人間を...?


 「うん、そうだよ。悪趣味な金持ちたちに高額でね。だからお金いっぱいあるよ。これで一緒に暮らそう、もうマンションも一室買ったんだ。
俺が卒業するまで毎日は一緒にいれないけど大丈夫。その分愛してあげるから、もちろんセックスでだ。セックスしちゃったら俺、嘉一のこと監禁しちゃうくらい好きになるだろうから、我慢してたけどそれも、もういいんだよね」


 一息もつかないでベラベラと信じられないことを言う久礼に俺は体を震わせることしかできなかった。

 そして久礼は俺の上着を巻くしあげて、冷気に反応した胸の突起を舐め上げた。


 「ひぃ...ぁ、いや、だ...」


 「嘉一、乳首舐められるの好きなんて知らなかった。画像見て初めて知ったよ」


 「やめ...ろ。く、れい...っ」


 頭がついていかない、それはもはや起きたばかりで、という理由ではない。
 久礼の言っている話の次元が違いすぎるからだ。

 だって、俺の知っている久礼はいつもニコニコしている能天気な野郎で、甘えたがりで犬みたいに嘉一嘉一、って俺の後をついてくる...。
 それに新たに知った一面だって、ただの浮気者っていう最低な部分だけ...のはずなのに。

 違う、違う...。目の前のこの男は誰だ。俺は知らない。


 「あぁ、画像に映ってたやつは売らないで――殺しておいたよ?」


 「...っ!そん..な、んんっ...はっ、」


 こんなこと言う奴を俺は知らない。妖艶にほほ笑みながら満足そうにいう男。
 キスをされ意識もぼやける。...いや、俺はこの現実から逃避しようとしているのかもしれない。

 だってそうだろ?


 ――こんなの普通じゃない――


 「ずーっと一緒だよ。死んでも一緒。嘉一好き、大好き。俺、嘉一がいるだけで幸せ。だから、邪魔な奴は排除してあげるから心配しないで。
もう嘉一以外誰も抱かない。だってもう嘉一は俺にしか触らせないし、他人の視界にも入れてやらない。俺だけの嘉一になったんだもん。
嘉一も嬉しいよね。俺達愛し合ってるしお互いが唯一無二の存在なんだから。今度からはちゃんと愛してあげる。あいつらの時も嘉一と思って仕方なく抱いてたんだ。じゃなきゃ勃たないしね、あぁ本当嬉しい―やっと嘉一と1つになれる」

 誰だ、こんな奴知らない――そんなお前なんか...久礼なんか...


 ――愛シテナンカ、イナイ――


 もう遅い、もう遅いんだ...お前も、俺も


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あきゅろす。
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