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君のため




 「もう寝てるか。」

あれから長々とカラオケボックスで時間をすごし、駅で皆とわかれて一人ゆったりと家に帰った。

 「鍵閉めろって言ったのに...」

 手をかけた玄関の扉のカギは開いており、物騒だな、と思いながら中に入った。

 「ただいま、」

 その一言に返ってこない声。
静まり返った家の中。

 やはり、もう寝てしまったか。

 「...ん?」

しかし、階段を上りきって俺はある小さな異変に気づいた。

 ...宵人の部屋の扉が空いている。
それは本当に小さなこと。だけどなぜか俺はにはとても違和感を感じさせられることだった。

 何が?どこが?そう問われると答えられない。
しかし何かが俺を惹きつけた。

 「 宵人... ?」

 部屋の中は真っ暗だった。声はかけるが返答はない。

 「 入るぞ... 。...っ!?」

 一歩、部屋の中へ入った瞬間。俺はそのまま立ち尽くしてしまった。

 それは、臭いが原因で。...部屋の中は独特な臭い...情事後の臭いで包まれていた。

 一瞬、どうしよう、どうすればよい、と思い悩んでしまう。

 2人は恋人同士。家に誰もいないというこの状況...わかりやすい行為への理由だが、予想していなかった。


 このまま立ち去ってしまおう。今、ここに恋人の姿はない。きっとすでに家に帰ったのだろう。

 立ち会ってはいけない場所へ来てしまった。

 そして俺は引き返そうと足を後ろへ引く。

 「...っ! 」

 しかし一瞬香った血の臭いに俺は反応し、宵人がいるであろうベッドの方へ走り寄る。

 「宵人っ!...ぁ、よい...と、...ひどい、」

 膨らみのあるベッドの上。強くなる精液の臭いに、血の臭い。
カバーを剥げば目の前に広がる、宵人の無残な姿。

 衣服は纏っていない宵人の身体は酷い殴打のあとがあり、足の間から太股にかけて血がついており、宵人のものか、相手のものか、どちらかの精液が身体を汚していた。

 まるで...いや、確実に...それは強姦された後の姿だった。
 どう見ても合意で行ったことだとは思えない。

 「宵人!大丈夫か宵人!!」

「 ...まな、と...?」
 
 手が汚れることも気にせず、意識のない宵人の身体を揺する。
 すると、ゆっくりと宵人は瞼を開け俺を見、そして...涙を流した。

 「俺...あ..ま、まなと.. 」

 「落ち着けっ。まず、身体を洗い流そう。傷の手当も...話はそれからだ 」

 いつものような笑顔も冷静さもなく、しゃくり始める宵人の背を撫ぜ、優しく声を掛ける。

 それからしばらく経って宵人の涙が止まってから俺は宵人を抱き上げ浴室に連れて行った。

 傷がある部分に手が触れるたびに肩をビクつかせる宵人を見て、心が苦しくなった。



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あきゅろす。
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