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君のため
落ち込み=幸せ



 『ごめんね、愛都。明日は叶江君と会う約束したんだ。』

 電話口から聞こえる声に俺は「わかった。」と答えることしかできなかった。

 恋人ができたと聞いてから数週間。最近どこか調子がよくなかった宵人はみるみる元気になっていった。

 相変わらず小さな傷はつくってはいたが、
笑顔を見る回数は増えていった。

 「なんなら家に連れて来いよ。俺も誰か暇人と遊びに行って家の中、空けるから。」

今年に入ってから両親はアメリカに行ってしまい、無駄に広い家に住んでいるのは俺1人だけだった。

 もちろんお手伝いさんが午前中には来てくれるが、夕方になれば泊まり込みではないので帰ってしまう。

 学校の登下校もドライバーさんが来てくれるが、送り届ければすぐに去って行ってしまう。

 『でも... 』

 さみしい生活だったが1ヶ月以上も続ければ慣れてしまっていた。

 「いいから。お手伝いさんにも早めに切り上げてもらうように言っとく。折角の恋人との一時だ、ゆっくりしとけ。」

 『うーん...わかった。ありがとう、愛都 』

 見えはしないが嬉しそうに笑う宵人の顔が浮かんだ。
 
 それから明日会えない分を補うかのように長電話をし、欠伸がではじめた頃俺たちは電話を切った。

 「明日、会えないのか... 」

 繰り返すように言ったその言葉に連なって深いため息が出た。

 でも、宵人の嬉しそうな声を聞いたせいか寂しさを感じながらも、どこか俺は心が暖かくなった。



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あきゅろす。
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