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君のため
見るのは表だけ



 午後の授業は結局綾西は出席することもなく、俺にとっては特に何も起こらないまま過ぎ去ってしまった。そして向かえた放課後。

 頭に浮かぶのは綾西のことだった。


 精神的に弱い綾西。弱い、弱い、弱すぎる...少し、追い詰めてやればすぐに俺のことを恐怖の対象としてみるようになった。

 あいつはなんだ、悲劇のヒロインにでもなったつもりなのだろうか。
 計画としてあいつを追い詰めたのは俺だが、どうしても綾西のあの姿を見ていると愉快だと思う気持ちの他に、苛立ちも感じてしまう。

 早く、堕ちてしまえ。早く早く。
そうしたら少しはこの苛立ちも軽減することができるはずだ。


 はぁ、と苛立ちを吐き出すかのようにため息をする。



 「どうかしたの、愛都君っ。やっぱり転校初日は疲れたのかな?...僕でよかったらその疲れ癒してあげるよ」


 すると急に目の前に小柄な男子生徒が現れ俺の体に寄りかかってきた。
 それに嫌悪を感じながらも、笑みをつくり心配は要らないよ、ありがとう、と告げる。



 「え、何々抜け駆け!?待って待って、それなら僕の部屋に来ない?親睦を深めるためにも!」


 「そんなことより愛都君はどんな子がタイプ?愛都君のこと教えて!」


 「男同士に偏見とかは?」


 「てか、愛都君はやっぱり見た目からしてタチ?」


 1人が近づいてきたことによってぞろぞろと俺の周りに集まる生徒たち。

 帰り支度も終え、下校しようと思っていたのだがその生徒たちによって
道は塞がれてしまい、歩みを進めることができない。



 あぁ、うざいうざいうざい。
なんでそう、自分勝手にみんな動くかな。
話かけてくる内容も、気持ち悪い。
愛想をよくしてるとこういうのが多くなるから嫌なんだ。

 自分を作るようになってからは本当、そうつくづく思う。



 「あー、えっとごめんね。皆とも話していたいんだけど、これから届いた荷物の整理をしなくちゃいけないからそろそろ...」

 

 帰るね。そう言おうとしたが、その途中で小柄な男子生徒が2人ほど俺の体に抱きつき、もう少し話そうよとしつこく絡んできた。


 じわじわと伝わってくる他人の体温が気持ち悪い。思わず眉間にしわが入りそうになる。


 「ま、愛都君っ!!」


 あぁ、なんといってこの場を離れようか。
そう思い、頭を働かせたときすぐ後ろで少しキーの高い、上擦った声が俺の名を呼んだ。


 「沙原...君?」


 後ろを振り向けば、こちらを見る沙原の目とパチリと視線がかち合った。



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あきゅろす。
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