君のため
不安の種
高校に入って最初の頃、
俺は宵人に異変が起き始めたのに気がついた。
高校に入ってから宵人とは週に一度会うのだが、そんな宵人は顔に毎回かすり傷をつくってくるようになったのだ。
そして、気がつけばいつもどこかを見て
ボーッとするようになった。
『学校で何かあったのか 』すぐに俺はそう問いた。しかし宵人は笑って『 なんでもないよ 』と言うだけで、しつこく聞いても何も話してくれなかった。
宵人は何も言わないだろうということはわかっていた。
あいつはいつも俺や両親に余計な手間をかけさせたくない、迷惑をかけたくない、と
いつも気をかけておりそのため大抵の物事は自分一人で片付けるような奴だった。
だから、俺は宵人の悩みを聞いてやれず、不安ばかりが募っていく。
俺が側にいれば、同じ高校に通ってさえいたら...どんなにそんなことを考えただろうか。
しかしそれは無理なことだった。
理由は簡単。父親の会社がアメリカへの拡張に成功し、それに伴って俺も普通科のお坊ちゃん高校ではなく、その姉妹校の語学や海外の経済学に力をいれているお坊ちゃん高校に入学することになったからだ。
もしそれが早くからわかっていれば、俺と宵人はその高校へと入学していただろう。
しかしタイミングが悪くそのことが決まったのは、俺と宵人が普通科の学校での入学式を向かえる1週間前のことだった。
なんとか金の力で編入試験を受けることができた俺たちだったが、編入試験なだけあって受験の時の試験よりも難易度が難しく
俺は焦った。
それは自分が落ちてしまうのでは、という理由ではない。
宵人が落ちてしまうのでは、という理由からだった。
宵人自身平均よりは頭は良かったが、それは学年で上位を占めるほどのものではなかった。
結果、俺の不安通り俺は合格したが宵人は落ちて予定通りの普通科へと入学した。
自宅通いの俺とは違って寮生活の宵人。
幼い頃からずっと一緒だった俺たちは初めて離れ離れになってしまった。
だから俺にとって週に1回会うことが出来るその日はとても大切な日で、宵人の様子を伺うことのできる唯一の時だったのだ。
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