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君のため



 その中でも特に中心的にイジメてきたのは三人いて、一人は綾西 泰地 (アヤニシ タイチ)というチャラついたやつで、
 二人目は見た目は女のような中世的な顔をした永妻 晴紀 (ナガツマ ハルキ)。
 最後の一人は三人の中で最も暴力的で、言葉数が少ない香月 和史 (コウヅキ カズシ)という男で、宵人の体や顔にある傷のほとんどはこいつによってやられたものだった。


 「...っ」


 もう宵人をその高校へは戻せない。否、戻すつもりはない。


 行っても傷つくだけだ。そんなことを俺が見過ごすわけがない。

 そうだ、両親のいるアメリカへ行こう。宵人とアメリカにある学校に一緒に通うんだ。
そしてこんなことが二度と起きないよう、俺が宵人を守る。



 父さんも母さんもきっと宵人の今の状況を話せばすぐにでもアメリカで暮らせるよう手配してくれるだろう。

 明日にでもこのことを宵人に話そう。きっと宵人はすんなりと承諾してくれるはずだ。


 あと問題なのは叶江だ。何もないとは思うが一応もう一切関わるつもりはない、ということを伝えておこう。
嫌なことは先に済ませておこうと思い、さっそく俺はジーンズのポッケに入れていた携帯を手に取る。


 画面を見ると気がつかなかったが叶江からの電話履歴2件あった。

 しかし俺は掛けなおすことはせず、淡々とメールを打つとおそらく電話に出なかったことで苛立っているであろう叶江へとメールを送信した。


 内容は簡単だ。もう俺たち兄弟はここを離れる、宵人には自分がつくからもう宵人のために、とお前の命令を聞くということはしない。
だから俺たちは今後一切お前と関わるつもりはない、と。そのようなことを送った。


 何かしらの電話かメールが来るであろうと考えていたが、それからずっと俺の携帯は鳴ることもなく、時は過ぎていった。



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あきゅろす。
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