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君のため
嵐の前の静けさ


 「はぁー、ダルい。なんか飲みもんちょうだい」

 どれくらい経ったか、しばらくしてようやく叶江は俺から離れて、何もなかったかのように靴を脱ぐとそのままズカズカと居間の方へと入って行った。

 なんなんだ、と思いながらも携帯を拾うと急いで叶江の後を追う。

 「お茶ぐらいしかないけど...」
 
 「えーー、俺お茶嫌いなんだよな」
 
 「...そんなに飲みたいなら自分で買ってこいよ」

 せっかく嫌々ながらもお茶を用意して渡したのに文句を言われイラっとする。

 あー、ムカつく、一体こいつは何様なわけ。

 「ンな、めんどくさいことしねぇよ。はぁ、じゃあしょうがないからこれ飲んでやるよ」

 ブツブツ文句を言いながらもコップに口をつける叶江を見て、なんだか叶江に勝ったかのように
錯覚するのはしょうがないことだろう。

 なんたってあの叶江のわがままをつっぺ返したのだから。

 「てか、本当なんで来たの、」

 正直家の中にこいつを入れるのが嫌だった。宵人と育ってきたこの家にいる叶江。

 その叶江と俺の今の関係はすごく複雑なもので、俺の中に宵人に対する妙な背徳感が生まれる。

 それが嫌でいつもは叶江とヤる時は俺がわざわざ奴のところまで行っていたのに。

 「来ちゃダメなわけ?宵人のお兄さん」

 「...っ」

 やけに宵人という言葉を強調され俺は何も言えなくなってしまう。

 黙り込む俺を見て満足そうに叶江は笑うと空になったコップを俺に押しつけてソファに寛ぎテレビを見始めた。

その態度に不満はあったものの文句を言うこともできず、流しにコップをおくと俺も近くのソファに腰を下ろした。

 その後も特に何をするでもなくテレビを見続ける叶江。
時折テレビの内容に笑ったりはしているが、俺に話しかけたりは一切しない。

 俺には全く奴の考えが読めなかった。


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あきゅろす。
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