君のため
2
不良たちにレイプさせたあの日から、永妻とあの男子学生たちは1日1人、不良グループに回されていた。そしてレイプされていない残り3人はその行為が終わる前の間、ずっと自分たちのハメ撮りの動画をみさせられていた。
永妻を抜いた3人は自主退学寸前。永妻自身は沙原の命令を何でも聞く奴隷のように成り下がっていた。今では輪姦されても泣かず騒がず、ただただ喘ぎ、自分が犯されている動画を見ながら勃起するようになった。
その話を綾西から聞いた愛都は至極満足そうに微笑んだ。
「因果応報だな」
宵人を追い詰めた人間はもう真面な生活なんてできないほどに落ちぶれていく。
犬に成り果てた綾西に少年院にぶち込まれた香月。そして性奴隷のようになった永妻。
― みんな、みんなみんなみんな、堕としてやる
「...っ、」
そんな時、ふと脳内に浮かんだのは沙原の姿だった。当初は復讐のターゲットとしてみていた人間。純粋なその瞳で、愛都に盲目的に恋する1人の少年。今までの復讐をする際にはその恋心を散々利用してきた。
― 思えば、沙原も被害者の1人なのかもしれないな
沙原に感じていたのは僅かな罪悪感だった。だから永妻への復讐を遂げたあの日の恐怖を覚えるような猟奇的なセックスはもちろんのこと、その日から毎夜のように求められるセックスにも応えてきた。
激しく犯してと言われれば激しくしたし、優しく抱いてくれと言われれば望み通りの恋人同士の行為をした。
― もちろんそれもこの学校に通っている間だけだが。
最早、ターゲットの中から外れた沙原とは、この学校を出た後の生活では関わらないと決めていた。
沙原に対して愛情はなかった。あるのは...同情心だけだった。
すでに沙原も愛都と宵人の関係を知っている。そして自分が復讐をするために何人もの学生を貶めていったことも。
それでも沙原は変わらない愛を愛都に向けていた。寧ろそれはさらに強く、歪に、沙原自身の人格を変えてしまうほどに。
天使と言われた少年が今では愛のためにはどんなことでさえも平気でするような人間になってしまったのだ。
そんな純粋すぎる一途な愛が愛都の心を僅かに変えた。
「あ、愛都!君のことを探してたんだ」
「 里乃、」
綾西の部屋を出た帰り道、沙原のことを考えていた愛都だが、愛しいその声音に意識は全て持っていかれた。
後ろを振り向けばいつもの、明るい笑みを向ける里乃が立っていた。
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