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君のため




 まるで惹きつけられるかのように、周りから伸びてくる手も気にせず愛都はそこから目を離すことが出来ずにいた。
 ボタンを外され、素肌が露出される。綺麗に均等の付いた体を撫でまわされ、熱い舌で触れられる。

 「はははッ、兄弟そろって無様だね!あー、本当におかしい」

 そんな視線も目の前に現れた影で遮られてしまう。いつやってきたのか、そこに立つ永妻は心底嬉しそうに笑っていた。

 「あんたのその顔が見たかったんだ。...すましたその顔が歪んだところをね」

 頭を踏まれ、床に顔を押し付けられる。みしみしと骨が軋む音が内部に響いた。
 靴底を擦りつけるように、踏みつけられれば皮膚が擦り剥け、血が滲む。

 「これに懲りたら、もう学校から出てってね。もちろん、残ってたらあの千麻宵人の気持ちの悪い動画もそこら中に拡散だ。僕はあんな汚いの見たくもないけど、世の中はいろんな人がいるからね、中には“オカズ”にして楽しむ人もいるかもね」

 そう言えば永妻は大笑いし、愛都の顔に蹴りを入れた。その衝撃で一瞬視界が真っ白になり、チカチカとする。

 「う゛ぅ...ぁ゛、」

 視界が揺れ、頭がズキズキと痛む中、言葉にならない声で呻けば周りにいた全員が愛都を嘲笑した。
 ここにいる全員が、下品に愛都をあざ笑うのだ。

 「これはお土産だよ。あんたはどうする、オカズにでもする?あぁ、その時は動画よろしくね。自分の弟でマス掻く姿、良い絵になると思うよ」

 目の前におかれた1枚の写真。そこに写るのはあの木の下、宵人が好きだと言っていた森の中、色鮮やかな花に囲まれて尻の穴に屹立を突き入れられた哀れな宵人の姿だった。
 そこは何度も愛都自身宵人を感じたくて訪れていた、憩いの場所。

 「珍しく外に出かけたと思ったら、森の中に入って行ってさ。こいつらに追いかけさせてそのまま犯させたんだ。俗にいう青姦ってやつ?」

 そう言った永妻は目を細め、醜く微笑んだ。

 愛都が見たあの大木の下で。色鮮やかな花の下で。青く澄んだ空の下で。心地よい風が吹く中で。


 ― 宵人は、汚い奴らに犯されていた

 
 宵人は唯一の、自分だけの憩いの場さえ、奪われていたのだ。

 「それじゃあ僕はもう行くから。いつもの様によろしくね」

 そうして小さな害虫は部屋を出ていった。
 残されたのはゲラゲラと笑う下衆た笑い声と、肌に触れる他人の体温。
 だが、愛都の口からは何も発せられなかった。ただただ表情のない顔で男たちを見上げるのみ。

 「なんだこいつ、つまんねーの。もっと泣き叫んだりしろよ」

 それに飽きた男は愛都の口元のガムテープを乱暴に剥がした。


 「目には目を、歯には歯を」


 その瞬間、光のない瞳で、愛都はそう呟いた。

 「は?何言って――――― ひぎッ、」

 そして息つく間もなく愛都の頭上でガツンと何かを殴る鈍い音がし、男の1人が異常な声を出すとともに倒れた。
 そうして状況を掴んでいない残りの2人も同様に鈍い音とともに床へと倒れていく。

 「俺の愛都によくも...っ、許さない許さない許さないッ、」

 目の前に現れた狂犬は鉄バッド片手に何度も何度も男たちを殴り続ける。

 「あやにしー、その辺にしとけ。撲殺なんてしたら、俺の私刑に反するからなぁ、」

 はぁはぁと聞こえる荒い息遣い。バッドを投げ出した綾西は横たわるその体に縋りつき、消毒してあげるからね、と露出した肌を隙間なく犬のように舐める。

 そんな中、愛都は床に四肢を投げ出し宵人の映る“ビデオ”を眺めつづけた。


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あきゅろす。
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