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君のため




 予定通りの計画。予定通りの動き。予定通りの会話。それらはまるで映画のシナリオのように狂うことなく進んでいく。そうして今もまた...

 「楽勝な仕事だ。晴紀も何をあんなに怖がってたんだか」

 「鳩尾に一発ですぐ倒れちまう。とんだへねちょこじゃねぇか」

 愛都は晴紀の指示で動いているであろう男3人に、旧校舎へと連れ出されていた。
 頭上で繰り広げられる話を聞きながら、愛都は気を失うフリの方が難しいのだと悪態をつきたくなった。
 わざと殴られたとはいえ、もろに衝撃を受けた鳩尾はずくずくと痛む。それに眉を顰めれば、唐突に大量の水を頭からかけられ、愛都は目を開いて、さも今、目覚めたかのようなフリをした。

 「いつまで寝てんだ。さっさと起きろよ!」

 「...っ、」

 冬も間近な秋口。制服も水濡れとなり、寒さが身に染みた。そうして僅かに震える愛都を見て、恐怖で震えてるのだと勘違いした男たちは可笑しそうにゲラゲラと笑う。

 手足は紐で縛られ、口元にはガムテープを貼られているこの状況を考えれば、そう思ってもしょうがないのかもしれないが、男たちの反応に些か見下す気持ちが生まれてしまう。
 寧ろ予想通り過ぎる展開につまらなさまで感じてしまうほどだ。

 「お前よー、俺らの可愛い可愛い晴紀の邪魔ばっかしてるからこうなるんだぜ?」

 「俺らは身長のでかい、可愛げのない男は抱きたくないのによ」

 「そうそう、晴紀みたいな小さくてかわいいのがタイプなわけ。寧ろ俺らって被害者になれるんじゃね?」

 途端に下品な笑い声が大きくなった。抵抗のできない状態である愛都はこれから自分がされるであろうことがわかってもなお、表情を変えず男3人を見続ける。

 「怖くて何も言えないってか?はははっ、大丈夫大丈夫、緊張しないで、ちゃーんときれいに撮ってやるからよ」

 そう言って近づいてきた男子学生の手にはビデオカメラがあった。赤い点滅のあるそれは愛都をゆっくりと映していく。

 あぁ、つまらない。あぁ、哀れだ。あぁ、滑稽だ。
 全てが予想通りだった。

 「あっ、そうだ。忘れてたよ、BGMかけるの」

 もう1人の男は笑いながら何かのスイッチを押せば、用意されていたスクリーンに光が灯される。
 

 そう、予定通りのはずだった。


 「おまけもどうぞ」

 頭上からバラバラと落ちてくる、幾枚もの写真。

 「きっとお前も気に入るよ、まーなーとー君」

 それに写っているのは...――― 複数の男に犯されている小柄な男の体。

 『い゛っ...痛...、あ゛あッ、やめ、や...痛ぁ゛ッ、』

 そうして聞こえてきた、愛しいはずの者の、悲痛な声に導かれるようにしてみたスクリーンには...


 「ん゛ん゛ンん゛ーーーーッ!!」


 レイプされ泣き叫ぶ宵人の姿が映っていた。それに反響したのは、愛都の絶望の声だった。



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