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君のため
欲望



 人はどれだけの期間、自身の欲望を我慢することができるだろうか。
 そしてそのつもりつもった欲望を叶えるためなら、どれほどの対価を払うのだろうか。

 もちろん、その答えは1つとは限らない。いや、寧ろ複数存在する。

 欲望を堪え抜く者。忍耐力の弱い者。対価を払うくらいなら、とあっさり諦めてしまう者。はてや、同等の対価を払って欲望を叶える者。
 それは人それぞれだ。

 しかしある条件がつくと答えは2択に絞られる。そのある条件、それは...――――― もしも欲望を堪える者が“中毒者”だったら...というものだ。

 中毒者と通常の人間では全く別の心理模様が現れる。

 まず、中毒者は一般的な制限が利かない。何が何でも欲望を叶えようとする。
 ドラッグ中毒者などがわかりやすい例えだ。ドラッグの為なら法を犯すことだってわけない。
 自分自身の為だけに生きるのだ。...脳が正常な判断を行うことができないがために。

 とても本能的で、危険な存在となる。

 だが逆にいえば、それだけわかりやすく、単純で、扱い方がわかっていればいい道具となる。

 ― 狂った人間に考える余地などないのだから


 「つくづく、バカなやつだ」

 その言葉は真っ白な病室の中、響いたように感じた。

 「なぁ、宵人...もうすぐ、お前を虐めてたやつの1人に復讐できそうだよ」

 依然として意識は戻ったものの、魂が抜けてしまったような姿をしている宵人。だが、それでも愛都は十分だった。

 力なくベッドに投げ出されている手は、とても温かかった。頬は血色がよかった。
 生きてさえいてくれればそれで十分だった。

 「俺はいつまでも待つよ...また、宵人が笑顔で俺の名前を呼んでくれるその日まで...―――――― それまでに宵人をこんな目にしたやつら全員、地獄に落としてやるからさ」

 そう言い、ほほ笑む愛都の表情はとても和やかだった。

 「それじゃあ、明日の準備もあるしもう学校に戻るな...次、会う時は良い報告持ってくるから」

 そして愛都は宵人の頬にキスをすると、そのまま病室を後にした。



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あきゅろす。
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