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君のため
嫌な視線

 
 悔しい...。こんな奴に見下されるなんて。胸がムカムカとして、どんどんと苛立ちは募っていく。


 でもこれも宵人のためだ...宵人の...っ。


 「なぁ、−−−脱げよ、制服も何もかも全部、」


 「な、なんで俺がっ」

 必死に耐えていた中、言われた命令を俺は反射的に拒否し茫然としてしまう。


 「なんでって、そんなのお前が犬だから。犬なんだから服なんていらないだろ?」


 それは自分勝手な理由。俺の自尊心なんて全く考えていない。

 嫌だが、こいつの命令は聞こう。そう思ってはいたが、さすがにその命令には目を見張った。


 「宵人、」


 「...クソっ、」

 しかし、“宵人”を出されれば俺は何も言えなくなってしまう。宵人のため、宵人のため、と。


 ギリ、と歯を食いしばりながらも俺は制服に手をかけていく。

 俺は女なんかじゃない、男なんだ。しかもこいつとは男同士、裸になったからといって別段恥ずかしむことなんてないじゃないか。

 ...堂々とすればいいんだ。


 そう、自分に言い聞かせ上着を脱ぎYシャツのボタンをはずしていく。


 「あ、意外に筋肉ついてんだな、お前。着痩せするタイプか」


 「...だったら何だっていうんだ」
 

 ボタンをはずし終わり、Yシャツを脱いで上半身裸になればそんな俺を見て、叶江はニヤニヤと気持ちの悪い笑みを向けてきた。


 悪趣味な奴。気持が悪い。一秒、時間が進むごとに比例して俺の中で叶江にたいしての嫌悪感か募っていく。


 ベルトに手をかけて緩めている間も感じる舐めるような視線。


 こいつは一体何を考えているんだ。男の...同性の裸を見て何を感じる?...何も感じないだろう?

 それともただ単にこいつは俺に羞恥心を与えたいだけなのか。


 おちょくってる?俺の従順な姿を見て俺が犬であることを実感したいか、


 ...まぁどの理由にしても、こいつが気持ち悪い野郎だっていうのに変わりはないがな。


 「これでいいか」


 ストン、とズボンを下ろし下着だけの姿になる。
たくさんあるうちの一つの椅子に座りこちらを見てくる叶江にそう問えば、そいつは笑みを一層深めてきた。


 「何いってんの、俺は全部脱げって言ったの」


 そして席を立つと俺の方に近づきツゥ、と脇腹から腰までのラインを指でなぞった。


 「っ、触んな!気持ち悪い...ふざけんのも大概にしーーー」


 「わっかんねぇかなぁ...お前はとんだ駄犬だ」


 かと思うと急に肩を掴まれすぐ近くに会った机の上に無理やりうつ伏せに押し倒された。



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