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君のため




 「そろそろ離してくれないか」



 「...」



 「 離せ 」


 渋る綾西だったが、俺の強い口調に肩をすくめ名残惜しそうに手を離した。


 寮を出てすぐ。学校に向かって歩いているが、やはり朝も早いせいか人気は全くなく、歩いているのは俺と綾西ぐらいだった。


 「そう言えば、千麻じゃなくて愛都なんだ。」


 俺は先程、綾西にそう呼ばれたことを思い出し何気なく呟く。


 「ダメ...?」


 「...別にかまわない。名前の呼び方なんてどう呼ばれようがそれほど重要なことではないから」



 「本当?よかった。ねぇ、じゃあさ俺のこと綾西じゃなくて泰地って呼ん――――」



 「それは無理な相談だな。なんで俺がお前のことを下の名前で呼ばなきゃいけないんだ。お前は綾西って、名前で呼ばれてるだけマシだろ」



 そうきつく言い返せば、綾西は分かりやすいほど表情を落ち込ませた。
 しかし俺はそんなことを気にすることなく歩き続ける。


 「あぁ、そうだ。綾西、お前これから毎朝迎えに来い。朝っぱらから香月達と顔を合わせて登校するよりはお前と2人で登校した方が疲れないから」


 「え...!う、うん!」


 「時間厳守だから」


 先程まで落ち込んでいた綾西は俺のその命令に対して嬉しそうに頷き、喜んでいた。


 ― 本当、こいつも単純な奴。よくこんなすぐ感情をコロコロと変えることができるな。


 隣にいる綾西を一瞥し、そして再び視線を元に戻す。


 「ねぇ、愛都。ずっと気になってたんだけどさ、ケガ...大丈夫?あの...階段から落ちた、」



 「その時のケガなんてもうとっくに治ったよ。上手く受け身をとってたから小さいけがしかしてない。
 それよりも俺は腰のが痛い」


 そういって片手で腰を押さえれば、綾西は顔を真っ赤にして俯いた。


 「これからはセックスは俺がいいって言った時だけだ。お前が発情しても俺の許可が無ければセックスはしない。だからその時は自分でどうにかしろ」


 「.......わかった。」


 「まぁ、でも最後までその最中はちゃんと見ててやるよ」


 「わかった!!」



 変なところで食い付く綾西。自慰を見られて喜ぶなんて、もはやただの変態だ。


 ― だけどそれだけ俺が好きでしょうがない、ということなのだろう。



 ― 本当、気持ちが悪い。



 俺は鼻で笑い、侮蔑の目を向けた。



 だけど綾西はそれさえも嬉しそうな顔をして受け止めていた。



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あきゅろす。
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