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君を想う
7


 先程までの指とは比べ物にならないほどの圧迫さに息がつまり、狭いそこに無理やり捩じ込まれる痛さに止まりかけていた涙があふれ出た。

 「い゛ゃ、ぁ...痛...い、っ!無理、だ...っ、入んねぇ、よ...」

 尻の穴は襞が伸ばされるほど広げられミチミチと音がなり、啓吾に犯されてる恐怖を一層煽った。

 「ん...締まり、ヤバいっ、那智の中...すごく気持ちいい」

 ゆっくりと挿入しながら啓吾は那智の背に覆いかぶさり、肩口に顔を埋めてきた。

 「い゛た...い、お願...抜い、て...っ」

 涙を流しながら懇願するが啓吾は「あともう少しで全部」とだけ言って抜こうとはしなかった。
 啓吾のモノは奥に入っていくたびに大きさを増し、その形をなぞるかのように中がはりついた。
 その形が妙にリアルに分かり、体は軽く震えた。

 そんな中、ついに自分の腰に啓吾の腰が当たった。

 「那智...全部入ったぜ?」

 啓吾のモノの根元まで全てが中に入っていた。那智は身体的精神的に疲労し、息は切れ切れになり常に吐き気がこみ上げる。

 男に...しかもずっと一緒にいた幼なじみに犯され、鋭い痛みが体を貫く。

 「動くよ...那智、」

 「ま、待って、あ...あ゛あぁっ、ひっ...ぅ、」

 那智の制止も聞かず啓吾はゆるゆると腰を動かしてきた。
 その行為に今度こそ裂けてしまうと思い、那智の中の恐怖は一気に膨れあがった。

 「那智...那智、那智...」

 「ひっ、い...あ、あ゛ぁっ、」

 啓吾はただただ那智の名前を呼び続け、深いゆっくりとした挿入を繰り返す。

 なんで...何で啓吾はこんなことをするんだ...

 ―裏切られた

 その一言が頭に浮かぶ。那智は啓吾を大切な幼なじみだと思っていた。だから何かあったら頼って、頼られて...信頼していた。
 そんな那智の気持ちを啓吾は踏みにじった。

 殴って蹴って終いには女の代わりをしろ、と犯される。
 お互いにお互いを大切に思いあってると思ってたのに。

 − でも本当にそう思ってたのは最初から俺だけだったのか...?お前にとって俺との今までの関係は全部うそで、どうでもいいことだったのかよ...

 「...ふ、ぐっ...ぅ、」

 啓吾に突かれるたびにそんな考えが頭を廻る。
しかしそんなこともお構いなしに啓吾は激しく那智を攻めたてた。

 「...んんっ!あっ...あぁっ、くっ、」

 「ははっ、気持ちい...?那智、」

 啓吾は那智の服を掴むと、少し角度を変え先程のあの一点を突いてきた。
 すると今まで感じたことがないほどの快感に、一瞬目の前が真っ白になった。
 それと同時に萎え切っていた那智のものも反応して大きくなっていく。

 「...っ..ぁ、ふ...あっ、んん..っ、」

 意思とは関係なしに疼く内壁を擦りあげながら奥へ奥へと熱い啓吾のものが埋め込まれ、一点を先端で抉るように擦られる。

 そんな快感に堪らず喘ぎ声を上げる。最低だ...大嫌いだ。
犯されて喘いでいる自分も、俺を犯す啓吾も...

 「那智...な、ち...っ、」

 「あぅっ、あ...っ、ぁ...はげし...っ、」

 段々と性急に激しく上下に揺さぶられ、途中途中意識が飛びかける。
 喘ぐたびに、感じるたびに、罪悪感が心を浸食していく。

 「けい...ご、もう...嫌、だ...っ」

 こんなに苦しいのに体はそんな気持ちも知らずに快感に反応し、熱くなっていく。
 何度も何度も一点を抉られ、そして擦られ、敏感な最奥を力強く突き上げられる。

 この行為には痛みはあった。しかしすでに那智は限界がきていた。先走りが垂れ、太股をつたう。

 でもイけない...もうはち切れそうなくらいなのに、イけなくて、快感だけが那智を苦しめる。

 「那智...腰、」

 「っ!」

 イケずに苦しんでいると啓吾はおもむろにそう言ってきた。そして那智はその言葉を聞いてハッとした。
 自分は激しく啓吾に突き上げられながら、自らも動きに合わせて腰を振っていた。

 そんな無意識な自身の行動に追いつめられ、那智の中の何かが崩れさる音がした。
 もう、心はボロボロだった。

 「ふぅっ...ぅっ、く...っ、」

 涙も止まることなく流れ続ける。こんな自分の体が嫌で、辛くて...全てを拒絶するかのように目を瞑った。

 『お前は本当にバカだよなぁ』

 「...みな、と...」

 すると瞼の裏に湊が浮かび、何度も言われていたその言葉が聞こえた気がした。
 大好きなその姿...声、

 「...湊...みな、と...ふ、ぁっ、」

 会いたい、ただただ湊に会いたかった。

 「うるさい...っ、」

 「ひ...っ、あ、ん...、あぁっ、やめ..」

 “湊”その言葉を口にした瞬間、啓吾は苛立った様子で那智のものを握り、荒々しく扱きながら内壁を酷く掻きまわしてきた。

 「う、あぁ...っぁ、んんっ...イ、く..っ」

 啓吾は捩じ込むようにして幾度も激しく腰を打ち付け、最奥を穿つと同時に那智の性器の先端を爪で抉った。

 「うぁ...っ、ぐっ...!」

 瞬間、目の前がチカチカとして、押し出されるようにして白濁を自分の腹に吐きだした。

 するときゅうっ、と後ろが締まり啓吾は少し呻き那智の中に打ち付けるかのようにして吐精した。


 ――


 ――――


 ――――――


 あれから何度ヤッたのか分からない。
何度もイき、そして何度も中に出された。体は疲れ切っていて微塵も動かない。

 制服も中途半端に脱がされたままだった。
情事が終わって、啓吾は自分の処理だけするとそのままそんな那智のことを放っておいて一人、教室の扉の方へと歩いていく。

 「...お前なんか、嫌いだ。大嫌いだ」

 憎しみのこもった目で鋭く啓吾を睨みあげる。
すると啓吾は扉に手を掛けたまま立ち止まった。

 「あっそ、」

 それだけ言い、啓吾は一人那智の前から去っていった。扉が閉められ、あたりには静けさが立ち上る。

 「...クソっ...なん、なんだよ...っ、」

 悲しさ、悔しさ、怒り...そんな感情が溢れ出てくる。

 「バカ野郎...」

 しかし、立ち止まった時の啓吾の最後の表情が忘れられなかった。
 扉のガラス窓で反射して見えた啓吾の顔は酷く歪められていて、今にも泣いてしまうのではないかというほど苦し気な表情をしていた。

 ― 散々俺にあんなことをしておいて、なんであんな顔してんだよ...

 すでにボロボロになってしまっていた那智は、今の気持ちをどう表せばよいのか分からず、また一人頬を涙で濡らした。




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