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森の中の花
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 「森末君、ちょっと今いいかな」

 それは珍しく花崎が何処かへと行ってしまった10分休憩の時のこと。すれ違ったら困る、と1人机に突っ伏していた森末だがクラスメイトであり、委員長である女子生徒がその肩を軽く叩いて声を掛けた。

 「来月のプール授業のことで話をしたいんだけど今いい?」

 「...いいけど」

 「よかった。昨日森末君が授業サボってた時にプール授業の話がされてたんだけど、その内容を伝えといてくれって先生に頼まれてたの」

 突っ伏していた体を起こせば、至極面倒そうに委員長は内容を話し始める。日程や時間、気をつけることなど、それを聞きながら頭に思い浮かぶのはこのクラスのクズな担任のことであった。

 「てか、それ《《先生》》が俺に直接言えば良いだけの話だよな」

 「...知らないわよ、そんなの。私は頼まれたことをしてるだけ。それじゃあ、とりあえず連絡内容はこれだけだから」

 これ以上は関わりたくないのであろう、それだけ言うと委員長はさっさと自分の席へと戻って行った。

 ― あのクズ教師は目を逸らすのだけは一丁前だよな。

 森末自身がいじめられている時もそうだったが、今現在花崎がいじめられてもなお、担任の教師は面倒ごとはごめんだとばかりに花崎と森末の2人とは距離を置いている。そうしてできるだけ関わらないようにして自身のクラスの問題から逃げているのだ。

 そんな担任の態度を見ていれば、こちらも教師を頼るなど甚だしい、微塵も起きないものだ。
 
 「それにしても、プールか」

 「え!いいねプール。俺泳ぐの大好きだよ」

 「ぅわっ、ビビった...急に現れんなよ、花崎」

 突然後ろから掛けられる声に心底驚き、心臓がバクバクと鳴った。後ろを振り向けば、ここ1番の笑顔を向ける顔と目が合う。
 いつの間にか戻ってきていた花崎は森末が呟いたプールという話題に興味津々のようであった。

 「ねぇねぇ...今日の夜学校に忍び込んでさ、2人でプールで遊んじゃおうよ」

 そんな花崎の誘いを断る理由など今の森末にはない。そして森末は二つ返事で了承した。



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あきゅろす。
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