最後に笑うのは、 3 だけどそんな日常もあいつが現れたことによってすべて壊された。 「穂波!これからよろしくね、」 目の前に立つのは、親族からも可愛い可愛いともてはやされる、俺のいとこの二葉(フタバ)。 サラサラの髪にアーモンド形の大きな瞳。その縁を囲うのは長いまつげ。 小さく整った鼻と口は、一層この人間の愛らしさを増幅させていた。 髪の毛が長ければ、女と見間違えてしまいそうなその姿に男らしさ、男臭さなどは欠片もなかった。 「あぁ、ちょうどよかったわ。穂波、これからほぼ毎日二葉があんたに勉強教えてもらいに来るから、面倒見てやんなさいね。 ほら、二葉もあんたと同じ大学に行きたいらしくてね、昨日姉さんと話し合ってこうすることにしたのよ」 二葉の隣に立つ母さんはお気楽に笑いながらそんなことを抜かし、優しく二葉の頭を撫でる。 「それにしても二葉はいつまでたっても可愛いわ。あんた、本当に高3なの? あの男勝りな姉さんからこんなに男臭さがない男の子が生まれるなんて、世の中何が起こるかわからないわね、」 「あははっ、でも僕は穂波みたいにかっこよくなりたかったなぁ、」 「...っ!」 唐突に掴まれる腕。俺は反射的に振り払いそうになったが、母さんがいる手前、なんとか力を抑え込んだ。 しかし、腕から伝わる二葉の体温が気持ち悪くて俺の眉間には皺が入る。 「ちょっと待てよ。俺は二葉に勉強教えるなんて無理だ。そんなに俺のいる大学に行きたいなら塾に通えば...」 「我が儘言わないでちょうだい。穂波、母さんの言うことが聞けないの?」 途端、真顔になる母親に俺は反論することができなくなり、俯く。 「...わかった」そしてそう一言呟けば、頑張ってね。と肩を叩かれる。 10年前に父さんが病死し、女手一つで俺をここまで育てた母さんの言葉に俺は弱かった。とてもじゃないがこれ以上反抗することなどできない。 それじゃあ、任せたわよ。そう言って母さんは俺と二葉を廊下に残し、買い物に出掛けて行った。 「穂波...穂波、」 「っ、離せ!...くそっ、なんで俺がお前の勉強なんか見なきゃ...って、おいっやめろ!」 「いーや!離さないもん。久しぶりの穂波の体温...気持ちいい。それにやっぱり穂波の匂いも大好き。」 一度振り払うその手は再び伸び、思い切り抱きつかれる。 俺の胸元に顔を擦り付け、匂いを嗅ぐ二葉に俺は顔を青くさせた。 [*前へ][次へ#] [戻る] |