[携帯モード] [URL送信]

最後に笑うのは、
37



 「う゛っ、ぁ...何して、」

 そんな時だった。不意を突かれてひも状の何かで腕をまとめて締めあげられたのは。
 後ろから押されて倒れる体。そしてすぐに仰向けにされると、腰のあたりに跨られ体重をかけられる。

 「...ッ、」

 恐る恐るあげた視界に映るのは、微笑む二葉の顔。
 昔から異常な行動をするときに見せる、その微笑みに穂波は心のそこから恐怖した。

 硬直する体。わななく唇。いつもなら抵抗して被害が大きくなるのを避けるために、穂波は大人しく二葉のやることに従っていた。いな、従わざるおえなかった。

 ― でも、今回は違う。いつものように流されるつもりはない。

 「...っ、やめろ二葉!俺は今日こんなことをするつもりで来たんじゃないし、勉強をしに来たわけでもない。...話をするために来たんだ、」

 口を開くたびに声が震えそうになった。今まで培ってきた恐怖が湧きあがり、何度も二葉に反抗するという行為を止めさせようとしてくる。

 「お前は異常だ。異常なんだ。今のままじゃ誰も幸せになれない。俺に依存なんかしないで、もっと普通の生活を...―――ッ、」

 だが、次の瞬間には右手で塞がられる唇。シン、と静まる室内。そんな中、アハハッ、と高笑いする二葉の声がやけに大きく聞こえた。


 「今更何を言ってるの...僕をこんなんにしたのも、全部全部穂波のせい。それに僕たちは愛し合ってたでしょ?ずっと...ずーっと前から。...それなのに、穂波は僕を裏切った。」


 「ぁがっ...ッ!!う゛く...ッ、」


 きつく締められる首元。肉に爪がめり込み、ひどく痛む。気道はしめられ、生理的な涙がこぼれ出た。

 ― 意味が、分からない。またこいつは自分の妄想をごちゃごちゃと...―――

 二葉の妄想癖は今日に始まったことではない。今まで何度も...そう、何度も何度も何度も何度も...―――


 「僕は、異常なんかじゃ...ない、」


 「くっ、ぅ...ぁッ、げほッ、けほけほっ...はっ、ぁ、はっ...」

 
 漸く首を絞めるその手が外され、穂波は大きくむせかえる。一気に空気が気道を通って肺に入ってくるという流れが、苦痛に感じた。

 「僕は穂波を愛してるんだ...ねぇ、日向さんのことは見逃してあげた。...あの人も馬鹿な人だったからね。でも...――― 」

 「やめ...ッ!!」

 服を捲られ露わになる胸元。穂波の顔は赤くなるどころが、蒼白としていった。

 「これは、門の前にいた人につけられたの?」

 いつになく低い声。

 口元は微笑んでいても目は笑っていなかった。



[*前へ][次へ#]

38/59ページ

[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!