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最後に笑うのは、
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 「だから、穂波に特別に想われてる日向さんには何もしなかったけど...」

 「二葉...」

 「あんまり僕に冷たくするなら...日向さんも、“前”と同じ目に合わせるよ」

 ニタリ、と不気味にほほ笑む二葉。

 “前”という言葉とその微笑みが頭の中で合わさり、穂波は倒れ込むようにしゃがみ込んで二葉の肩にしがみつく。

 思い出されるのは、高校の頃。俺に告白をしてきた女子生徒のこと。二葉に隠して女子生徒と付き合った期間は1週間。
 その1週間でなぜかそのことが二葉にバレてしまい...翌日の夜、顔を腫らし髪の毛も乱雑に切られ、ボロボロになった彼女がやってきた。
 そして彼女は“別れて下さい”と死人のような顔をしてそう、穂波に言ってきた。
 “何があったんだ” “誰にやられた” 何度もそう聞いても彼女は焦点の合わない瞳を宙に向けるばかりで何も反応しなかった。しかし、

 “二葉にやられたのか” そう訊いた時、

 彼女は顔を青白くし、震えながら穂波に一言呟いてきた。

 “お願いだから私のことでその人を責めないで。じゃないと...じゃないと次は...――――

 ――― 殺される”

 その時、穂波の脳裏を横切ったのは二葉のあの、微笑みだった。
 だからそれから二葉と会っても穂波はそのことについて二葉を責めることができなかった。

 “殺される” そう言った彼女の言葉が嘘ではないということは自分自身、これまでの体験で理解していた。
 そしてただ彼女と別れた、ということだけ話せば...――― やはり、二葉は不気味に微笑んだ。


 「ふふっ、大丈夫だよ穂波。まだ日向さんには何もしないつもりだから。...っていっても、それは穂波の行動次第だけど、」

 「俺の...行動次第、」

 近づく二葉の人形のような顔。そして重なる唇。

 「この続き...穂波は何をすればいいか、わかるよね」

 「...ッ、また...またしなきゃダメなのか、」

 「別に僕は無理強いはしないよ?」

 微笑む二葉。そんな二葉を...――――


 ――― ドサリ、と穂波は床に押し倒した。


 「ふっ...ぅ、あっ...んんっ、」

 二葉の服を脱がせながら唇を重ね、口腔を舌で犯せば二葉の口からはくぐもった、甘い声が零れる。

 ミンミンと鳴く蝉の声。暑さで肌に浮いた汗が一粒、頬を伝った。



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あきゅろす。
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