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最後に笑うのは、
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 「ん...」


 ふと、目を覚ませば視界には最後に見たベランダの風景ではなく、薄暗い部屋の中が広がった。
 覚醒しきっていない頭は未だ熱を発しているのか、ズキズキと痛んだ。

 ― 俺...どうして部屋に、


 しかもどういうわけかベッドの中にいた。服も雨でずぶ濡れになっているはずなのに、乾いてさらついていた。というよりも、別の服が着せられていた。

 ― まさか日向が...?

 瞳を閉じた状態で寝がえりを打ち、そこで俺は漸くある違和感を感じた。
 穂波の服から腰に掛けて...何かが軽く巻きついていた。
 そしてもう一度、瞼を開けた俺は驚き息を詰まらせた。もう少しで鼻と鼻がぶつかりそうなほど近くにあるのは、日向の眠りについている顔。

 驚くべきことに日向は穂波に抱きついた状態で眠っていたのだ。
 どうして、どうなっているんだ、と予想外の展開に口はわななき、目は見開く。

 俺を殴っていた時の荒れた表情が嘘だったかのように、日向は安心し、安らいだような顔をしていた。

 ― 日向が...こんな近くに...

 あれほど暴力を振るわれていたのに、今の穂波の中には怒りの感情はもちろんのこと、先程まで感じていた悲しみも、何もなかった。あるのは、日向に対する愛情と現状への幸福感。

 ― 今だけ、もう少しこのまま...

 体を少し下にずらし、日向の胸に顔を埋める。そうすれば僅かに俺を抱く日向の手の力が強まった。
 愛しい人間の匂いと温かなぬくもり。夢なのではないかという状態に心は歓喜し、満たされていく。
 そうして、瞼は重くなり始め再び穂波はまどろみ、意識を沈めた。





――


――――


 「...なみ...穂波、起きて!ねぇ、穂波」


 「んん...るさい、耳に響く...」


 体を揺さぶられ、大きな声で起こされた時、隣に寝ていた日向の姿はなくベッドに腰掛けていた二葉が視界に入る。


 「穂波、熱あるんでしょ?大丈夫?穂波いるんだったらもう少し早く帰ってくればよかったなぁ、」


 「...触るな、」


 「あははっ!穂波、目潤んでる。可愛いーなぁ。あー、もう、本当後悔。昨日はお母さんに呼ばれても帰らないでいつも通り日向君の家に泊ればよかった。そしたら穂波を看病できたのに。」


 穂波の髪の毛を触りながら微笑むその姿は、やはりいつものことながら俺に恐怖しか与えなかった。
 

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あきゅろす。
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