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リクエスト小説
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 私の兄さんは自慢の家族。血は繋がってないけど渉兄さんはそんなことを忘れさせてくれるほどに私に優しい。
 頭も良くて何でもできて、学校でも人気で。お父さんもお母さんも渉兄さんが大好き。

 でも、渉兄さんは少し、変わってる。誰も気づいていない、私だけが気付いている...ーーーずっと渉兄さんのことを見ているから。

 「ねぇ、渉...渉は僕のことを愛してる?僕がいないと生きていけない?」

 「ふふ...はははっ、ごめんごめん、そうだよね。渉には僕が必要だもんね、僕だけが渉の味方だから」


 「...また、やってる」

 渉兄さんの部屋の扉に耳を当てればそんな会話が聞こえてくる。もちろん声は一人分。渉兄さんはこうして部屋にいるときはいつも独り言を言っている。一人で楽しそうに“会話”をしている。

 最初は変だと思った。だけど楽しげな渉兄さんの声を聞いていると私もなんだか幸せな気持ちになった。
 今では、こうしていつも耳を澄ましてずっと中の話し声を聞き続けている。
 そしてこんな日々を続けていれば、必然的に私は渉兄さんのある光景を目にしてしまった。


 それはある日の夜のこと。お風呂から上がった私はいつもの日課の如く、渉兄さんの“会話”を聞きに行った。

 「...ぅ、あっ...やめ、あ゛ぁッ、そこ...いや、だ...っ、」

 聞こえたのは小さな喘ぎ声。

 「...あ、...ッ、イキそ...」

 それはいつもの渉兄さんとは違う雰囲気の声。好奇心のまま私は扉をそっと開け、隙間から中を覗き見た。

 「...っ、」

 渉兄さんは自身の性器を扱き、快感で顔を惚けさせていた。だけど、自分で自慰を行っているはずなのに、渉兄さんの口からはまるで自分が犯されているような言葉ばかり紡がれていく。

 ー それはまさに、その場に二人の人間が存在しているような...


 「渉兄さん、きれい」

 
 私は、その日初めてひどく高揚した。


 ーー


 ーーーーー


 ーーーーーーーーーーー


 「渉兄さん、私もまぜて」

 翌日、ひよりの口から出たのはそんな言葉。その瞳に輝きはなく、黒く濁った瞳がジッと渉を見つめていた。
 口元にだけ笑みを浮かべたその表情は不気味さを一層掻き立てる。

 「覗き見なんておませなことしたのかい、ひより。ダメだよ、僕たちの“中”に入ってくるのは。」

 そして渉はひよりの頭を優しく撫でると目を細め、悪魔のように笑った。

 

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