リクエスト小説 2 高校も最後までこのつまらない人間と一緒なのかと思えば、落胆や苛立ちばかりが生まれていた。 ― だが、そんな一臣の前に人生の転機ともいえる人間が現れた。 「僕は咲(サキ)。これからよろしくお願いしますね、一臣会長」 今まで見たことがないような愛らしい笑みを浮かべ、一臣に挨拶をしたのは天使のような人間だった。 学年順位も一位の一臣に次ぐ二位で、一臣同様眉目秀麗だった。噂は常々聞いていたが会うのは初めてだった。 今まで他人にはあまり興味を持ってこなかった一臣だが、これを機に一気に咲に惚れ込んでしまう。 ― そしてその光景を、要は無表情で見つめていた。 「咲、お前は本当に可愛いな。隣に居るだけで心地がいい」 「もう、一臣会長...人前では恥ずかしいからやめてくださいよ」 生徒会室でのこと。他の役員もいるというのに、一臣は周りの目を気にすることなく咲に抱き付く。 口では注意をする咲だが、腰に絡みつくその手を拒むことはない。 誰も止めることのない、2人の空間はひどく甘くどいものだった。 2人は付き合っているのだ、と信じて疑うものは誰一人としていなかった。 幸福に包まれた日々。一臣は咲に心底惚れ込んだ。それはもう、周りが見えないほどに。 だから気が付かなかった。 「ねぇ、一臣会長...僕、すごく退屈なの。何か面白いことして?」 どこかで聞いたことのある呟きに。 「その髪型も、僕好きじゃないな。もっとここの髪を伸ばして...ここは短く!ね、いいでしょ?」 天使が紡ぎだす、悪魔の囁きに。 「なぁ、どうだ咲。全部、お前の思い通りだろ。気に入ったか、楽しいか?」 ある人間と同じように行動している自分に。 一部の生徒は気が付いていたが、相手は生徒会役員。何も言うことができなかった。 「次はどうすればいい?何をすればいい?何が欲しい?全部...全部俺が叶えてやるよ。何でもだ、お前が望むことならなんでも。」 ―――――――――― ―――――― ――― 「じゃあ、次は要君に犯されて?」 そう言った目の前の天使は、朗らかに笑うだけだった。 [*前へ][次へ#] [戻る] |