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リクエスト小説




 ― 俺の幼馴染は変人だ。


 同じ高校の生徒会役員である要(カナメ)は一臣(カズオミ)にとって一般でいう幼馴染という関係であった。
 高校に上がってから、明るく染まった金に近い髪の毛。耳にはいくつものピアスがついており、指や手首にはいつもアクセサリーを身に着けていた。
 元々は野暮ったい黒髪に地味な眼鏡をつけていたのに。


 『お前ダサすぎ。キモいからもう俺の目の前にくるな』


 中学卒業と同時に、一臣が要に言い放ったのはそんな棘のある言葉。すると高校入学時には今のような落ち着きのない素行不良そうな姿で目の前に現れた。

 “これなら、いい?”そう訊く要に一臣は再び棘をちらつかせる。

 『はっ、下半身ゆるそう。これで本当に下半身ユルユルだったら面白いのにな。まぁ、お前みたいなつまんねぇ人間には無理だろうけど』

 一臣が向けるのは見下した瞳。極端に自身の容姿を変えたのは面白かったが、だからと言って何ら興味は湧かなかった。自分の隣に立つのは、要のような人間は相応しくないのだ。

 元々は親同士の仲が良く、半ば強制的に幼馴染になったようなものだった。
 幼稚園から中学まで一緒にいることを強要され、漸く高校で離れられると思っていても、要が一緒のところがいいからと一臣についてきたことでその願いが叶うことはなかった。

 周りから一臣の金魚のフンと言われようが、いじめられようが何ら気にすることはなく、また一臣の言うことは何でも喜んで従っていた。...――― その結果、

 『一臣、俺ね童貞も処女もなくしたよ。毎日ここの生徒とヤってる。そしたら皆、俺に下半身ユル過ぎって言ってくれるようになったんだ。なぁ、面白い?俺、一臣のこと、楽しませれてるかな?』

 やはり、一臣の言葉通り要は見た目通りの素行になった。

 『本当、お前気持ち悪い。一生やってろ』

 一臣の口からはその言葉だけを投げつけた。


 そうして月日は経ち、一臣はその美麗な容姿から、また学業においての成績から人気を得て会長の座に。

 『一臣が生徒会に入るなら、俺も入る』そう言った要は、人脈やセフレたちからの人気を得て会計というポストに就いた。

 『これで同じ仕事ができるね』

 不機嫌な一臣に臆することもなく、要は終始笑顔でいた。
 好きだと告白してくるでもなく、ただただ同じ空間にいようとする要。一臣の言うことにはすべて従い、冗談さえも本気で捉え行動する要は一見、単純そうにも見えるが、にこにこと笑うその気味の悪い瞳の裏では何を考えているのか分かったものではない。

 喜怒哀楽があるというよりは、いつも軽い笑みを浮かべ愛想よくする。まるで人形のような存在。


 それが幼馴染である要という男だった。



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あきゅろす。
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