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リクエスト小説




 「花火すごいすごいーーっ」


 「本当、すごいね...って、あっ!まなと入口のひもが...っ」


 「...え?あ...あーーーーっ!!」


 まなとが花火に夢中になって橋のてすりに金魚の袋を置いてしまった時、縛り口のひもがゆるかったのか金魚が跳ねるのと同時に入口は少し開いてしまい...


 「金魚...落ちちゃった」


 まなとがぼくの声でそのことに気付いた時にはすでにおそく、金魚はそのまま橋の下の川に落ちていってしまった。


 「え!?金魚落ちちゃったんですか!?」


 ぼくとまなとの慌てた様子に反応してたえさんも驚いて体をのし上げて橋から下を見下ろした。
 しかし金魚が見つかるわけもなく、すぐにたえさんは眉を下げてぼくたちの方を見てきた。


 「愛都坊ちゃん残念ですが金魚は...」


 「...うぅっ...金魚...っ、よいとと育てようって...言ってたのに、」


 まなとは目に涙をいっぱいためて金魚のいない...水しか入っていない袋の中を見つめた。


 「愛都坊ちゃん元気を出して下さい」たえさんはまなとの背中をなぜながら優しくそう言うが、まなとの顔は下を向いたままだった。


 あんなにがんばってようやくとれた金魚。しかもぼくのためにあんなに頑張ってとれたもの...


 ぼくも悲しくて涙が出そうになった。だけど...


 「まなと!あそこ見てよ!!」


 「...え?」


 ぼくは川の奥を指差して、花火の音に負けないくらいの大きい声で叫んだ。
 その声につられてまなともようやく顔をあげてその方向を見る。


 「花火は空だけじゃなくて川にもあるんだよ!水がキラキラ光ってきれいなんだ!だからあの金魚もこんなきれいな水の中に入れて嬉しいんじゃないかな」


 そこには空に上がった花火が川の水面に反射してキラキラときれいに光っていた。


 「本当だ...キラキラしてる」


 「そうですねぇ、キラキラしていてすごくきれい。...宵人坊ちゃんのいう通り、きっと逃げてしまった金魚さんも同じことを思っているでしょうね」


 「たえさんもそう思うでしょ?それにね、まなと。ぼくは...まなとがいてくれればそれでいいから!なんたってまなとはぼくの自慢のお兄ちゃんだしさ」


 するとまなともその言葉にハッとして、泣かないように顔を引き締めた。


 「おれも...よいとがいてくれるだけでいい」


 まだ目に涙は溜まっていたけれど、そう言ったまなとの声はすこし力強かった。


 「そうだ!花火を背景に写真を撮りましょう!花火が上がっているうちに」


 「うん、とろう!ね、まなと!」


 「えっ!あ...う、うん!」


 「お二人とも、準備はいいですか?とりますよー、」


 そしてぼくとまなとは慌ただしい中、強く手を握り合って明るい光の中に包まれた。


 ―


 ――


 ―――


 「....っていうことがあったんだよ。それでね、あのあと...ん?愛都?...って、寝てる」


 急に相槌がなくなったので不思議に思いふと横を見れば、そこにはスースーと静がに寝息を立てる愛都の姿があった。


 「あははっ、こういうところは小さい頃から変わらない」


 こう、我が道を行くっていう感じとか。愛都は僕の話を子守唄か何かだと思っているのだろうか。


 ―まぁ、こういう部分がなんか可愛いんだけどさ。


 「これからもよろしくね、お兄ちゃん」


 小さい声でそう囁き、愛都の手を優しく握ると僕もそのまま愛都の横で静かに眠りの世界へと入っていった。



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