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リクエスト小説




 「まーなと。喉、乾いてない?何か飲むなら買ってきてやるよ」


 「...別にいらない。たいして乾いてないから」


 「ふーん。あっ、腹は空いてない?」


 「ここに来る前に食べてきたからいらない」


 ソファに座る愛都の横に腰掛け、肩に腕を掛ける叶江は先程から崩れることのない完璧な笑顔を愛都に向けていた。
 それだけでも日常とはかけ離れた様子の叶江だが、それに加え今日の叶江は妙に愛都に対して優しく、その態度が正直薄気味悪く感じた。
 
 普段とは真逆の人間。何か企んでいるのではないだろうか、と晴れることはないであろう疑いばかりが頭を埋めつくす。


 「じゃあ、何かしてほしいことは――― 」


 「そんなことより、俺を部屋に呼んだ要件は?俺だって暇じゃないんだ。さっさと言ってくれ」


 まだ気味の悪い優しさを向けてこようとする叶江の言葉を遮り、その笑顔を一瞥する。
 この態度で少しはその笑顔も崩れるだろう、そう思っていたが、未だ笑顔を崩さず「ははっ、愛都冷たいなぁ」なんて言って叶江は俺の嫌味を軽く流す。


 「要件なんて特にない。しいて言うなら、愛都と一緒にいたかったから、とか?」

 
 「...うざ、」


 その瞬間、体中に鳥肌が立った。その気持ち悪さに驚く。
 
 これ以上は付き合ってられない。

 俺は肩にある叶江の腕を払い、立ち上がる。


 「 帰る。」


 「えー、帰るの早くない?まだ全然話してないじゃん」


 そう言う叶江の言葉も無視して、俺はそのまま部屋を後にした。


 ―


 ――


 ―――


 それから数日。


 ― またかよ...


 携帯に映し出される、同じ送り主からの大量のメールと電話。
 それはもう、優しさに溢れている内容ばかりで反吐が出そうになった。
 毎日飽きることなく続けられるそれに愛都はうんざりし、携帯の電源を切る。
切る直前に見たメールは呼び出しのものだった。

 今まではうざいと思いながらも毎回呼び出されるたびに叶江の部屋に行っていたが、どれもこれも大した用事ではなく、相手をしろというものばかり。
 特にセックスをするわけでもなく、ただただ気持の悪いあいつの話し相手になるだけ。

 どうせ今回もその類だ。そろそろ俺も限界が近い。
 叶江に何があったかは知らないが、あの優しさは異常だ。


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あきゅろす。
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