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リクエスト小説




 「あぁっ!またとれなかった...」


 「兄ちゃんはがんばり屋さんだなぁ、もう8回目だ。どれ、やっぱりこっちの道具使って金魚取った方が...」


 「いいんだ、おじさん!おれはこれでとりたいから」


 そういいまなとはプラスチックの大きなスプーンではなく、薄い紙の方の道具で挑戦し続ける。


 「あっ、あとちょっとだったのに...よし!次だ次!」


 そしてそうしてる間にも、まなとはまた失敗して9回目の挑戦に入った。


 「...愛都坊ちゃん、金魚だったらお店でもたくさん買えますよ?今度一緒に見に行って...」


 「それじゃあダメなの!おれがとりたいの」


 ついに見ていられなくなったのか、たえさんも一言申し出るが、まなとはガンとして受け入れなかった。


 ―こんなに何かに熱中してるまなと...はじめて見る。


 それはたえさんも同じ意見だったらしく、たえさんは戸惑いながらもどこか嬉しそうにしていた。


 「...まなとっ、がんばって...」


 「ん、おう!」


 9回目も失敗して10回目にさしかかった時、ぼくはまなとの甚平の裾を掴み、そして応援した。
 ...がんばれってきもちをあげたくて...やる気をわけてあげたくて。

 するとその気持ちをまなとはわかってくれたのかニッ、と僕の方を見て嬉しそうに笑った。


 「しずかに、しずかに...とぉ!!...ぁ...」


 きっとまなとは金魚すくいは向いていないのだろう。だけど...


 「あ、やった!!まなと!一匹とれたよ!!」


 10回目にして、ようやくまなとは一匹だけ金魚をすくうことができた。


 「よいと!こいつはおれとよいと2人で育てよう!」


 「2人で?」


 「うん。よいと、金魚好きなんだろ?暗い顔してたのに、金魚みたとき一瞬明るい顔になったから...」


 「まなと.....うん、一緒に育てよう!ありがとう...本当にありがとう、」


 「まぁ、愛都坊ちゃんは宵人坊ちゃんのために頑張っていたのですか。なるほど、それであんなに熱中していたんですね」


 「おう!同じ年でも、一応おれのほうが兄ちゃんだからな」


 「...ぼく、まなとがお兄ちゃんでよかった。」


 「ふふふっ、仲が良いというのはよいことですね」


 まなとと2人、手をつないで歩くぼくらを見て、たえさんはにっこりと笑っていた。


 「あ、ここからの花火がとてもきれいに見えるらしいですよ」


 しばらくそうして歩いていれば、橋の上に来たときにたえさんはそう言ってぼくたちの歩みをとめた。

 そしてぼくたちがたえさんの声に反応して空を見上げた時。


 「花火だーー!」


 バンバン、と大きな音が鳴り、空いっぱいにきれいな花火が打ち上げられた。


 「うわぁ、すごい...っ」


 「きれいですねぇ、」


 ぼくたち3人は花火にくぎ付けになった。



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あきゅろす。
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