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リクエスト小説




 「せっかく2人きりなのに。クラスでも邪魔なやつは消したのに...今度は弟の女か。なんで真崎は俺を怒るんだ。なんで俺を拒絶するんだ。なんで俺の言うことに頷いてくれないんだ。――― なんで、女なんかのために、俺に冷たくなるんだ」


 「あ゛...っ、ぁ...ぐ、ぅ...っ、」


 「どうして俺と一緒にいるのに女のこと考えてんだよ。なぁ、お前には俺しかいないんだよ?今でも弁当は真崎が自分で作ってるのかと思ってたのに...ちゃっかし俺以外の人間が触ったもんだったし。汚いよ。それにいつも思ってたんだ、真崎は俺が触れたものだけを体に取り込めばいいって。そうすれば人間の三大欲求のうちの真崎の食欲と性欲、二つも俺は支配できるんだ。そうだ、いい機会だからこれを機に...――」


 わけのわからないことを早口でベラベラと話す佐竹に俺は戸惑いを覚えた。
 佐竹らしくもない意味不明な言葉の数々。突拍子もない発言。要点のない内容。

 苦しい中、先程までの会話を思い返すが佐竹がこうなるほど反応した個所がいまいちわからなかった。
 弁当がどうのだとか言ってたが、それの何が悪いというのだ。何に対してそんなに怒っているのだ。


 「う゛っ、く...っ、」


 「はっ、う...げほげほっ、...けほっ...」


 佐竹の言っていること全て、わけが分からなかった。
 とりあえず、この状況をどうにかしようと渾身の力を込めて脇腹を蹴りあげればいとも簡単に佐竹は地面に倒れる。
 呼吸がままならないままに、まずは佐竹を落ち着かせようと立ち上がった。


 「少し、落ち着けよ佐た...―――、ッ」


 しかし、地べたに腰をおろしている佐竹の顔を見て俺は足を踏み出せず、立ちすくんでしまった。


 ― 殺される


 本能でそれを感じ、手の平に大量の汗を掻く。

 暗い瞳。力なく開いている瞼。薄く開いた口は細かく動き、また何か呟いていた。
 どんよりとした重苦しい空気。その中で逸らすことなく向けられる二つの瞳。


 怖い、と思った。


 そこに俺の知っている...クラスの奴らに好かれている、明るくていつも笑っている佐竹の姿はなかった。

 そこにいるのは全くの別人。殺気だけを放つ人形のような存在。
 きれいに整った顔が一層不気味さを醸し出していた。


 そして佐竹が立ち上がろうとした瞬間...


 「...っ、」


 俺は荷物も全て置いて、そこから逃げ出した。



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あきゅろす。
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