リクエスト小説
2
「うわぁーーっ!!すげー!すげーよ、よいと!お祭りってこんなでかいんだ」
「うんすごい!順番に回っていこう!」
小学3年生になり、ぼくはまなとと初めてお祭りにやってきた。もちろん、まなとの家の家政婦さんも一緒に。
「それじゃあ、何処から行きますか?先に何か食べたいですか?それとも遊びたいですか?」
家政婦のたえさんは右にぼく、そして左にまなとの手を引いてゆっくりと屋台の中を歩いていく。
「ぼくはどっちでもいいよ。まなとは?」
「うーん、おれは...全部一気にやりたい」
「ふふふっ、愛都坊ちゃん、それは少し難しいですね」
「あははっ、まなと欲張りさん」
まなとの言葉にたえさんはクスクスと笑い、僕もつられて笑った。
それでもまなとはあきらめていないらしく、キラキラした目であたりを見回している。
僕よりも少し小さくて、お人形さんみたいにまなとは可愛い。でも中身は正反対でいつも元気いっぱいで走り回っている。
―本当、まなとはぼくのじまんの義兄弟だ。
「おれ、おなかいっぱい。もう入らないよ」
「まなと買ったやつ全部たべっちゃったもんね」
「愛都坊ちゃん食べ過ぎでお腹が出て、苦しそうですよ?」
「うん、全部おいしすぎてキツかったけど食べちゃった」
そういうまなとをたえさんはまるでぼくのお父さんとお母さんがぼくのことを見ていたような、優しい目でまなとを見る。
前にまなとからきいた話しだと、たえさんはまなとが赤ちゃんの時からめんどうを見ていたらしいから、きっとたえさんもまなとのことがすごく好きなんだと思う。
「...。」
――いいなぁ...
その時、急にぼくの頭の中にお父さんとお母さんの顔が出てきた。
今日くらいでちょうどお父さんとお母さんの命日から1年くらいが経つ。...そう、大好きなお父さんとお母さんの笑顔を見れないまま1年が経ったんだ。
「...よいと、どうしたの?」
「、ううん何でもないよ!ちょっとボーっとしてただけ」
下唇を噛んで地面を見ていれば、まなとはたえさんの手を離してぼくの目の前にしゃがんできた。
下から目線を合わせるかのようにしてじーっとまなとはぼくの顔を見てくる。
「あら、宵人坊ちゃんどこか具合でも悪いのですか?少しあちらの椅子の上で休みましょうか」
「大丈夫だよ、たえさん。心配いらないよ!」
お父さんとお母さんのことを思い出して寂しくなった。なんてなんだか恥ずかしくて2人には言えなかった。だからぼくはすぐにニコリと笑ってごまかした。
「...」
そんなぼくにまなとはどこか不満そうな顔をしていたけれど、しばらくしてもう一度たえさんの横に戻っていった。
たえさんも、心配そうな顔をしていたけれど僕の笑顔を見て安心したようにニコリと笑った。
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