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協和音




 部活動に入っているためにいつもは帰宅が遅いひより。
だが、今日は...こんな日に限って部活が休みだったのだろうかいつもより早い帰宅だった。


 ――嫌だ、こんな姿見られたくないっ...こんな、こんな...っ


 このイレギュラーな事態により俺は改めて自分の状況を自覚した。

 大嫌いな兄によって、女のように股を広げられ昂るものを体に挿れられている。
 根元まで挿れられたせいで、尻にあたる兄貴の腰からじわじわと自分のものではない他人の体温が広がる。

 一気に俺は焦り、息を荒げた。


 「こーら、僕のこと以外考えたらダメでしょう?」


 「んん...っ!」


 そんな俺を咎めるかのように兄貴は腰をゆっくりと打ちつけてきた。
 咄嗟に俺は声が漏れないよう手で口を押さえたのだが、第一声は間に合わず漏れ出てしまった。


 「...ん?渉、兄さん?...いるの、」


 その声をとらえたひよりはコンコン、と俺たちがいる客間の扉をノックしてきた。
 鍵は閉まっていたはずだ。しかし声を上げれば...もしくは兄貴が変なことを言えば...鍵を開けてしまえば...もう、終わりだ。


 バッ、と兄貴を見、俺は訴え掛けるように弱々しい眼差しを向けた。
 すると兄貴は...ゆっくりと笑った。


 「ひより、僕だよ。渉じゃなくて歩。今日は帰ってくるのが早かったんだね」


 「...っ!!」


 俺を攻め立て、昂りの律動をやめることもなく兄貴は爽やかにひよりに話しかけた。
 すぐに俺は先ほどとは打って変わって、兄貴のことを睨みあげるが、兄貴は口ぱくで“おしおきだよ”というだけで行為をやめようとはしなかった。


 「あっ!歩兄さんだったんだ。それにしても、どうして歩兄さん客間なんかにいるの?」


 「どうしてだろうね、当ててみてよ」


 「えぇー、そうね...なんでだろう」


 止まらない挿入。それは激しさを増すばかりで、俺は必死に声を殺した。
 扉の前でひよりは兄貴の問いに対して考え込んでしまった。



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