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協和音




 俺と兄貴の義妹となったひよりは先月病死した使用人の子供だった。
 行く宛てもなく、路頭に迷おうとしていたひよりを両親は養子にしたのだった。
 もちろん、それは家の評判を上げるために。


 だが、それでも初めて俺は両親に感謝した。

 なぜなら、ひよりに出会ったことによって――俺は再び感情が強く蠢くのを、感じることができたのだから。


 栗色の柔らかな長髪、白い肌に映えるほんのりと赤い唇。長いまつげに縁取られた二重の瞳。華奢で背の低い小さな身体。


 ひよりは俺が今まで見てきた中で、一番可愛らしい容姿で俗に言う美少女。
笑った顔は花のようにきれいだった。

 そんなひよりに俺は、一目惚れした。
 一瞬のうちに顔が熱くなるのを感じた。今までにないほど、心臓がうるさく高鳴った。


 そして兄貴は俺のひよりに対する愛情を目敏く察し、


 前以上に俺を独占しようとしてきた。





ーー


ーーー


 「おかえり、渉」


 「...」


 学校から帰ると、いつものように兄貴が玄関で俺の帰りを待っていた。
 爽やかな笑顔を作っているつもりなのだろうがその瞳に宿るギラついた、雄を出した感情が全てをぶち壊していた。


 「渉、どうして今日はいつもよりも帰りが30分も遅かったんだ?帰りが遅れる時にはきちんと僕に連絡するように、っていつも言っているだろう?」


 「...離せ」


 兄貴の横を通ろうとするが、兄貴は俺の腕を掴むことによって当然の如くそれを阻んでくる。
 俺よりも細い、その腕の一体どこにそんな力があるのだ、というほど兄貴は強く俺の腕を掴む。


 「答えになっていないよ、渉」


 「...あんたに関係ねぇだろ」


 「なぜ答えないんだ。僕に言えないことでもしていたのか?誰だ、相手は誰?男なのか、それとも女?どこまでやったんだ。なぁ、渉」


 「うっさいな!!あんた本当ウザい」


 ガッと強く兄貴の腕を振り払い、俺から遠ざけるよう肩を押す。
 その勢いで後ろに一歩下がる兄貴だが、無表情のままこちらを見てくるその姿に俺はゾッとした。


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