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協和音
15



 「どいつもこいつも何だってんだよ」


 あれから結局俺は早退し、家に帰ってきた。
周りの奴らの声に堪えることができなかったのだ。友人たちの俺ではなく、兄を求める声の数々。
俺にはそれらを堪えることができる忍耐力などもう持ち合わせていなかった。


 「全部あいつのせいだ...」


 持っていた鞄をてきとうに放り投げ、着替えを済ますと倒れるようにベットの上へと横たわる。
 

 苛立ちで精神が安定しない。何もする気になれない。胃がキリキリと痛んだ。





ーー


ーーー


 『兄貴、彼女連れてきたんだ。紹介したくてさ』


 長いきれいな髪の彼女を横に、俺は兄貴の部屋の扉を2、3回軽くノックする。
 隣に立つミキは初めてできた彼女だ。ミキは周りのように兄貴を求めるのではなく、俺だけを見てくれた唯一の人間だった。大切な存在。だから兄貴に紹介しようと思った。


 『兄貴...?』


 しかし、兄貴は部屋にいるはずなのに部屋の中からは物音ひとつ聞こえなかった。

 おかしい。寝ているのだろうか。そう思い、静かに扉を開け覗き込むようにして隙間から中を見る。


 『...なんだ、返事が無いから寝てるのかと思った。入るよ、兄貴』


 てっきりベッドの中にでもいるのかと思ったが、兄貴はいつものように机に向かって勉強をしていた。

 どこか恥ずかしそうにしているミキの手を取り、中へと入った時、漸く兄貴はこちらを見てきた。


 『彼女って...渉と付き合ってるっていうのか...?』


 『あぁ、彼女のミキっていうんだ。その...兄貴にはちゃんと紹介しておきたくて、』


 『こんにちは、お兄さん』


 軽くお辞儀をし、挨拶を終えたミキは俺の方をチラリと見上げる。
 
 そんなミキの頭を軽く撫で、前を向くと無表情の兄貴と目があった。



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あきゅろす。
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