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協和音
13



 「うわっ、誰もいねーし」


 兄貴の誕生日の日、俺は家族と顔を会わせるのが嫌で早朝から学校へ登校した。

 しかし教室には誰もおらず、シーンと静まり返っていた。


 はぁ、と俺はため息をし、自分の席に着くと暇つぶしに携帯を弄り始める。


 「...っ、何だよ、これ」


 早朝だ、ということも関係なく、俺のメールボックスには新着が十数件きていた。

 何気なくそのメールを見た俺だが、その内容に眉をひそめる。
 それらは全て友人からのものなのだが、その全てにある共通な部分があった。


 “歩さん”“誕生日おめでとう”これらの単語が含まれたものばかりだったのだ。
 中には俺の誕生日の時などメールも何も送ってこない奴らも多くいた。


 ―何が、伝えておいて...だ。てめーが直接言いに行けっての。


 そして俺は1件も返信することもなく携帯を閉じ、机に突っ伏した。





ーー


ーーー


 「渉、今日は歩さんの誕生日だろ?めでたいよなぁ。あー、なんかプレゼント用意しとけばよかった」


 「何々、お前用意してないのかよ。俺はちゃんとしたぜ?ほい、渉。これ、歩先輩に渡しておいてくれよ」


 ぽん、と小包を投げられ受け止めたそれを俺は機械的に鞄の中へと放り込む。

 ――こんなの渡したってあいつは全部捨てちまうのに。

 
 たいして奴らは兄貴と絡んだことはないはずなのになぜこんなに俺の兄貴を尊敬し、愛するのだろう。
 いつもお前らと一緒にいるのはこの俺なのに。この差は何なんだ。

 中学も高校も俺と兄貴は学校が違う。したがって俺の周りの奴らも兄貴のことなど知らないはずなのだ。

 しかし周りの奴らはまるで兄貴と部活動なんかの先輩と後輩の関係であるかのような雰囲気を出してくる。仲のいい親しげな雰囲気を...。


 一体いつ、どこで会ったりしたんだ。俺の知らないところでこいつらは皆兄貴と会っているのか。


 「...っ、」


 分からないことばかりだ。こんなことばかり考えているせいか、徐々に気分が悪くなり胸がむかむかとし吐き気がしてきた。


 ――相当俺の神経も細くなってきてんな。


 「悪い、ちょっとトイレ行ってくる」


 授業をさぼって空き教室で過ごしていたのだが、ついに限界が近づいてしまった俺はその場を離れることにした。
 青ざめる俺の顔を見た友人たちも、急な俺の変化に驚きはしても止めることはせずただただ俺の後姿を見送った。


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あきゅろす。
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