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協和音
11



 「ねぇ、渉兄さん。これなんかどうかな?」


 「んー、ちょっと女っぽくないか」


 「そう?じゃあ、これは?」


 「あ、それならいいと思う。シンプルだし服に合わせやすいんじゃないかな」


 「おっけい、これにする!じゃあ会計してくるから渉兄さんはここにいて」


 タタっと軽やかな足取りでレジへと向かうひよりを目で追う。


 昼下がりの午後。俺はさっそくひよりと兄貴への誕生日プレゼントを買いに街場へと来ていた。
 ニコニコと嬉しそうに笑うひよりが考えていることは兄貴のことだとわかってはいるが、それが俺に向けられるだけで気分が高揚してしまう。
 ...俺のための笑顔じゃなくても、


 「...にしても、人混み多くなってきたな」


 徐々に増えてくる人の数。ひよりが戻ってきたらなるべく早くここを出た方がよさそうだ。
 それからは多分、ひよりも家に帰りたいだろうからこの楽しいひと時ももうすぐ終わってしまう。


 あぁ、あっという間だ。でも、今まで生きていた中では一番楽しいと思えるような時間だった。

 数時間と、短い時間にあったひよりとの会話などを思い出していく。


 ―は、俺ってこんなに女々しかったんだ。


 そんな自分の思考に対して自重気味な笑みがこぼれた。





ーー


ーーー


 「ひより遅いな」


 時計を見るがあれから結構な時間が経っていた。
 もしかして迷ってしまっているのだろうか、と電話をかけるがひよりはそれに出ることはなかった。

 あまり遠くへ行ってはいないだろうからと俺はひよりは探すために足を動かした。
 とりあえず会計を済ませるといっていたのでレジの方へ行こうと思い、歩いていたのだが...
 その途中であっさりと俺はひよりを見つけることができた。


 ―しかし、近づくことはできなかった。


 ...ひよりは兄と一緒にいたから。


 「...っ、なんであいつが...」


 仲良さそうに、楽しそうに会話をしている2人から目が離せない。人混みが多いせいか、2人はまだ俺の存在には気づいていないようだった。



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あきゅろす。
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