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協和音
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 『兄貴、勉強教えてよ。次のテストで赤点採ったら補習になる教科があってさ、やばいんだよね』


 『あぁ、渉。いいよ教えてあげる。それにしてもまた悪い点数を採ったのか?渉はちゃんと勉強すればいい点採れるのに』


 中学に入って2年目の寒い冬。あと少しで年を迎えて大学に向けての受験生となる兄貴は俺の来訪を暖かく迎えてくれた。


 『いや、俺は兄貴と違ってデキが悪いからさ。』


 物覚えの悪い俺のことを兄貴はそんなことない、と優しく否定するが俺の心は沈むばかりだった。


 頭が良く、優しい兄貴。だけど気づいてる?最近、少しずつあの頭の固い母さんと父さんの俺に対する態度が冷たくなっていることに。
 兄貴が通っていた有名私立中学の受験に落ち、しかも一般の公立高校の中でも上位になることができない俺に2人とも見切りをつけてきているんだ。


 あの2人にとって親子なんて関係は形にすぎない。
あいつらが重要視しているのは将来有益な子供になるかどうか、ということなのだから。

 そんな2人の期待に乗ることが俺はできないでいた。


 『そんな顔するなよ。大丈夫、僕がついてるから。』


 『...ありがとう』


 ニコリと笑う兄貴。そんな兄に対して俺は僅かに苛立ちを感じた。


 ――何も、知らないくせに





ーー


ーーー


 ピピピピピッ、


 「...んン...朝、か」


 枕元で煩くなる携帯のアラーム音を止める。
昨日の夜は部屋の中にカメラがないかどうか探したが、結局1つも見つけることができなかった。


 ―それにしても、随分と懐かしい...嫌な夢を見たものだ。
 今俺は高2だから...3年前くらいか。


 その時はまだ、普通に兄貴と接していたのだ。仲の良い兄弟として。


 「...夢見最悪」


 吐きだした溜息は思ったよりも深いものだった。


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