君のことだけ考えてた。
7
「はぁー...何もする気になんねぇ、」
アパートに帰り、特に何をするわけもなくベットの上に寝そべると、何の変哲もない天井を眺め見る。
瞼を閉じれば思い浮かぶシイナと女のあの姿。
シイナはあんな感じの奴が好みなのだろうか。それとも年上とか、きれい系が好き?
「まぁ、女ってことに変わりはないだろうけど」
いつかはシイナの口から“彼女ができた”という言葉を聞くようになるのだろう。
そうなったら俺はどう反応するのか。
笑って、“よかったな”“羨ましい”なんて言うのだろうか。
...いや、そう言わなければいけない。普通にいつも通りに...
俺のこの気持ちは隠し続けるのが一番なんだ。これ以上シイナを困らせないためにも。
――ピンポーン...
1人、決意をしていると部屋の中にチャイムの音が響き渡った。
いつもならすぐに出るが、今日はもう身体が重く、億劫だったので俺はそのまま居留守をきめこんだ。
――ピンポーン...
しかし、再びチャイムは鳴らされ、しつこいな、と思い視線をドアの方に向ける。
「イズモ、いないのか」
「...シイナ、?」
そして聞こえてきた問いかけの声に俺は驚き、慌てて玄関まで走っていく。
「あ、悪い。出るの遅くなった...」
「ううん、大丈夫。部屋入ってもいい?」
ガチャ、とドアを開ければそこにはにこやかに笑うシイナの姿があった。
「いいけど...」
まさかの来訪者に戸惑いながらも部屋の中にシイナを招き入れる。
「イズモの部屋、久しぶり」
居間に着くとシイナはソファに座り部屋の中を見回した。
確かに、いつもは俺がシイナの方に行っていたので
シイナがここに来るのは本当に久しぶりのことだった。
...といっても、来たのなんて2年間で両手で数えるぐらいじゃないだろうか。
それほどシイナは人形作りに没頭して俺から離れていたのだから。
「で、俺に何か用?」
せっかくシイナが来てくれたというのに俺の口から出るのはやはり小生意気なもの。
今日だって謝ろうと思ってたのに、いざ機会を得ても俺の面倒くさい性格が邪魔し、喧嘩口調になってしまう。
本当はすぐにでも謝ってしまいたいのに。
「とくに用事はないんだけど...ただ、学校の玄関でイズモがいるの見たから何となく気になって...」
「え...」
見られているとは思わなかった。
それにしても、ここに来た理由がそのことが気になったから、だとは...
その事実に俺は嬉しくなった。
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