君のことだけ考えてた。
6
それから数日間、俺は一度もシイナの部屋を訪れていなかった。
もちろんシイナも俺の部屋を訪れるなんてこともなかった。
朝も一緒に大学に行っていない。顔は何度も合わせるが一度も話していない。
自分でこんな距離感を作ったくせにすでに俺は辛くて辛くて、どうにかなってしまいそうだった。
「謝ろう...」
素直に謝って仲直りしよう。元々俺が悪かったんだ。だから俺が謝るのは当然のこと。
俺は再びシイナに笑顔を向けてもらいたかった。
思い立ったらすぐに行動。俺は放課後になると玄関でシイナのことを待っていた。
それからしばらくして靴箱の方からシイナの声が聞こえてきた。
その声を聞いて俺はシイナの方へ近づいていくが、その姿を見つけて俺はすぐ横の壁に隠れた。
「誰だ...あれ」
シイナの隣に立っている小さな可愛らしい存在。
その女は年下らしく、シイナのことを先輩と呼んでいた。
「...っ」
2人のその姿は“普通”の姿だった。一般的な恋人同士の形、偏見も何もない...
胸が苦しくなった。俺かシイナのどちらかが女であったら、俺はシイナに好きだって言うこともできるのに...
後輩の女と楽しそうに話しているシイナ。きっとその女はシイナのことが好きなのだろう。
積極的にシイナにくっついては上目づかいでシイナのことを見ていた。
俺の中を複雑な感情がグルグルと回り、2人から目をそらすと俺は1人、その場を去った。
同性というだけで生まれてしまう壁。
俺だって別に男が好きなわけじゃない。好きになった奴、シイナが俺と同じ男だったというだけ。
...なのに...なんで俺はこんなに苦しまなければいけないんだ。
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