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君のことだけ考えてた。
君のことだけ考えてた。



 「また人形作りかよ」


 熱心に何かの部品を作っているのだろうシイナの背中にそう言えば、「うん」とだけそいつは答えそれきり黙ってしまう。

 いつもの態度に俺は呆れ、床に座ると本棚にあった本をペラペラと読み始めた。


 シイナと俺はそれぞれ一人暮らしで同じアパートのお隣さん。
 付き合いは幼稚園の時からと長い。
しかも小・中・高・大学と全ての学校、クラス、学科が奇跡的に同じで俺たちはいつも一緒にいた。

 俺の中ではそれが当たり前の事実みたいなものだった。
 放課後になればほぼ毎日飽きもせずにお互いの家を行き来し、泊まり合ったりもしてたから
まるで兄弟みたいにな距離感でもあった。


 ...といっても、俺はそんな風にシイナのことを見たことはないが。


 読んでいた本から視線を外し、チラリとシイナのことを覗き見る。


 サラサラときれいな栗色の髪の毛に白い肌、切れ長の目。
その姿はどこか色香をはなっていて、男女関係なく惚れぼれするような容姿の持ち主だった。


 あー...やっぱり男に使うのもなんだがシイナはきれいだ。

そして俺もそんなシイナの容姿に惚れたうちの一人。


 小さい時は天使みたいな容姿。大きくなるにつれてどっかの王子みたいにかっこよくなるシイナ。
 性格も大人しくて、優しくて、控えめないい奴。
顔が良いから女と遊び歩いたり...ということも全くなかった。


 そんなシイナとずっと一緒にいて惚れない奴などいないだろう。 
 
 俺自身、もうずっと前からシイナのことが好きになっていた。


 「イズモ、そこのやすり取ってもらってもいい?」


 「ん?あ、あぁ。はい」


 ジッとシイナのことを見ていると、不意にシイナがこちらの方を向き、俺の足元にあったやすりを指差してきた。

 それを渡すとシイナは「ありがとう」とだけお礼をいいニコリと笑った。
 いつまで経っても見慣れることのないその笑顔に顔が熱くなるのを感じ、俺は持っていた本で自分の顔を隠した。


 静まり返った部屋の中、シイナが俺の方を見ているのが分かった。
 しかし、それも少し経つとなくなり部屋の中にやすりの音が聞こえ始めた。


 その音にようやく安心し、俺は固くしていた身体の力を抜いた。



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