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- Distance -
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<br> それにしても、主人には屈託がない。
 いつまでたってもそこだけは、初めて会ったときと同じ少年っぽさを残している。

 「中央はいかがでしたか?」

 「ああ、なんのことはない。人は多かったが、中身はたいして変わらなかったよ」

 「ご無事でなによりでした……」

 三ヶ月振りに元気な声を聞いて、思わず涙声になる。

 「どうした、たった三ヶ月だぞ?」

 青年は笑った。
 彼にとってはたった三ヶ月でも、ユエには長い日々だった。
 彼女にとって心を許せる相手は、世界中にたった一人しかいないのだ。

 「だが、俺も話が合う相手がいなくて退屈だったよ。次からはお前も連れていこう」

 「いけません、貴族は蛮族を使用人に雇ったりしないと聞いています」

 「そのくらいの融通は利くだろう」

 ユエは首を横に振った。
 気遣いは何よりも嬉しいが、それで主人に不利益があってはならない。

 「ユエはこの部屋でご主人さまのお帰りをお待ちしております」

 「うん? お前、三ヶ月前、俺が出かけるときにも同じことを言ったな」

 「あら……そうでしたかしら?」

 ユエはちょっと顔を赤らめて、三ヶ月振りの笑みをこぼした。

 主人は三ヶ月間、仕事で首都にいた。
 領主が父から自分へ代わったので、領地や税のことなど、いろいろな取り決めや手続きをしてきたのだ。

 「年下好みの未亡人がいてね」

 しばらく、土産話が続いていた。

 「伯爵夫人なんだが、中央では女性も高い地位に就いていたよ」

 主人は、いろいろと便宜を図る替わりに、一夜を共に過ごすことを要求されたのだった。
 その伯爵夫人というのが、かなりの性豪で、毎晩ベッドには三人の男と入るらしい。
 青年はたった一人で付き合い、婦人を失神させたという。
 おかげで、手続きはスムーズに行ったようだった。

 「かなりの好き者と聞いていたが、うちの夜伽係のほうがまだ上だったよ」

 そんな話を聞いて笑ってはみるものの、ユエは複雑な心境だった。
 自分が主人と決してそんな関係にはなれないこと。
 主人が自分にそんな話を平気ですること。
 主と奴隷の関係。
 それ以上を望んではいけないと思っていても、やはり寂しく感じてしまうのだった。


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