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- Maid in the Dark -
ep2.「前夜2」

 「明日はいよいよ真奈が来るわね」

 詩織(しおり)はシャワーを浴びたあと、乾かした髪を三つ編みに結いながら言った。
 沙織(さおり)の自室に同期の三人のメイドが顔をそろえていた。
 香織(かおり)はうなづいて、沙織のほうを向いた。

 「あたしと詩織は今夜おつとめだから沙織が迎えに行くでしょ?」

 「ええ、そのほうがいいでしょう」

 「沙織もそのほうがいいでしょう」

 香織は沙織の指で眼鏡をなおす仕草を真似ながら言った。

 「もう、なによ」

 「お待ちかねの真奈ちゃんだから」

 真面目な詩織までがひやかす。

 「また一緒にお風呂に入りたい?」

 孤児院では光熱費節約のため入浴はふたりずつ行なっていた。
 入る組み合わせはいつも、香織と詩織、沙織と真奈だった。

 「あ、あれは、あなたたちがデキてたから、必然的にあたしと真奈が入ってただけで……」

 「えー、ちがうちがう! 沙織が真奈と入りたそうにしてたから、あたしと詩織が気を利かせて一緒に入るようになったんじゃない」

 「そう、デキたのは卒業する年になってからだから。長く裸のおつきあいしててついムラっとしちゃって」

 香織と詩織は否定した。

 「そ、そうだったかしら?」

 「そうよ。でも真奈はあたしと詩織がつきあってるのぜんぜん気づいてなかったよね」

 「沙織が好きなことも気づいてなかったし」

 「あたしは、好きっていうか……妹みたいに大事に思ってただけよ」

 「あたしたちみたいにお風呂で進展はなかったの?」

 「胸大きいですねっていうから触らせてあげたり……」

 「お」

 「おっ」

 「それだけよ」

 「なあんだ」

 「ハッテンしなかったんだ」

 「そんな夜は部屋で泣きながら激オナニーして自分を慰めてたのね」

 香織が「二ヒヒ」と笑う。

 「なによ激オナニーって。してないわよ」

 「せめて、部屋が相部屋だったら多少強引にもいけたのにね」

 「あたしたちのときは四人だけになって部屋あまってたから個室だったもんね」

 「部屋あまっててもあなたたち一緒に寝てたでしょ」

 「バレてたか」

 香織が舌を出した。

 「でも……大丈夫かしら」

 詩織が真面目な面持ちになって言った。

 「来た当日に原液を三本も打つって」

 「う……ん」

 沙織の表情が曇る。

 「あたしたちでも一本は打ったし、真奈は食事で耐性つけてあるらしいからきっと大丈夫だよ」

 真奈よりも、むしろ沙織を気づかって香織が言った。
 もちろん、心配しているのは香織と詩織も同様である。
 みんな真奈のことは妹のように可愛がっていた。

 「また前みたいに四人で馬鹿話できたらいいね」

 「できるわよ、真奈が来れば」

 「ふふ、楽しみね」

 三人は顔を見合わせてうなずいた。



 「じゃあそろそろおつとめ行くわ」

 香織が壁にかかった時計を見上げて言った。

 「はい、おつかれさま」

 そそくさと部屋を出ていくふたりを見送ったあと、ひとりになった沙織は深々とソファーに腰を下ろした。

 「そう……楽しみね」

 沙織は背もたれに躰をあずけ、一年後輩の愛らしい笑顔を思い浮かべながら目を閉じた。





 epilogue2「前夜2」

 End



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あきゅろす。
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